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第45話
① 先生の秘密 その1 吐露
1人で学部の準備室で外を見ていた男性。
小野さんじゃなかった。
構わず開けた扉の音で、その人は振り返った。
違和感のある面差し、
誰でしたっけ?
「あっ、」と同時に声が上がって、
「君は?」
と問いかけたのは
相手の方、担当英語の橋下先生だった。
うわ〜なんて言おうか、女装してるんだから顔じゃわかんないだろうし……
その前に家族以外知られるわけいかないし……
モジモジと思案している僕に向かって、
「きみは学生? それとも誰か訪ねて来た?」
後ろの問いなら乗っかれると判断した僕は、
「あの、小野さんに用があって」
と僕にしては上手な嘘が出た。
「小野くん? 小野くんなら、帰ったようだと思うけど」
「あ、それなら、ぼ、私は……」
「ちょっと待って、彼の机を見てあげる」
いやいや、その机の横に僕の荷物があるんですけど。
どうしよ〜
迷いながら隣の学部室入る橋下先生の後についていった。
「あれ、カバンがあるから、いるかもしれないね〜 」
いやいやそのカバン僕のです。
心の中で呟きながら、どうやってこのカバンを持って出るか思案してる僕に、
「待ってる間、お茶でも飲むか い? 」
とまさかのお誘い。
え? え? え!
女装の僕にお茶の誘いって、
先生にバレてる? まさかね。
兎に角、準備室に戻り、
あ、なら、私が入れます。って言いそうになって、やば、お茶の場所知ってたらまずいじゃない。
先生の方が
「紅茶で良いですか? 」
とかなんとか言ってくれたから。
思わず、最高の笑顔で
「ありがとうございます」
と言った僕の顔を凝視した先生。
何故か俯きやや赤くなったようだけど、なんでかな。
お茶の用意してくれて、ソファに対面で座る。
お互い、暫くは声もなくお茶を啜りながら、 先生が一言。
「帰りたくないって日がありますね」
「は? 」
「今日は家で待ってる人がいるので帰らなきゃならないんですが、脚がどうにも向かないんですよ……」
と、徐に、驚くような話が始まった。
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