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第46話
① 先生の秘密 その2 吐露
こんな話を僕は聞いて居て良いのだろうか?
頭に盛大な疑問符が並んでる。
先生の話は、自分たち兄弟は
本当にそっくりな双子だという話から始まった。
「一卵性というよりも1つの人間が2 つに別れたかの様な、
本当に見た目はそっくりな、
でも、
全く陰と陽な双子なんです。
僕が影の陰だとすると相手は陽そのもの、
昔から親には足して1つの人の性格だと言われて来ました」
と、カップを手にして、紅茶を一口啜り、先生は話を続けた。
「小さい頃はそんなに気にもしなかったんですが、思春期、中学くらいから、はっきりと立場が変わって来て。
相手の嫌な事は僕が引き受ける、僕は中に溜め込んでわからない様にする。
という関係に変わって来たんです」
凹凸で塞ぐ様に、凹の方の僕はもっぱら彼の裏を貼り付けて歩いて来た、というか
影を踏んできたというか。
僕はそんな先生の言葉に
頷くこともできず。
お茶も空になり、
ただ先生の語りかける眼を見ているしかなかった。
「そんな兄弟でも、
頭の能力は同等だったわけで。
学校学部は最後まで一緒に過ごしました。
彼は友人との毎日を楽しむために適当に僕にやらなくちゃならない嫌な事の役割を振っていたし、僕はただ毎日着々と課題を埋めていくのが楽しい性格だったんで、
そこでも凹凸が機能したんですね。
そっくりだから、洋服と髪型さえあって入れば、だれも身代わり気がつかないんです」
うっすらと笑った先生の顔……
何をいう気なんだ?この人は
爆弾でした。そして、聞きたくなかった爆弾発言を聞く羽目に。
「今日の僕は僕でした……
明日は相手が来るんですよ。ね、
誰にもわかんない…
ずっとそうやって交代してたんです。
だって、輝は楽しんでたから、僕には断れない……」
えーーーーー‼︎?
顔面麻痺してしまった僕に
先生は、
「あー、スッキリだ!
僕、今日誰かに話す予感があったんだけど、
全くの他人の貴方に話せたのは良かった」
ちっとも良くない、良くないよ‼︎
「そうだ。貴方にこれ預けます」
何?
目の前にストンと置かれたそれは、
髭?髭?
あーやっとわかった、さっきの違和感の原因。
先生はトレード・マークの髭がなかったんだ。
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