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第51話
閑話 パンケーキはやたらとホットでした その2
兄はいないと言おうとした僕の頭を抱え込んだ流星が囁く。
「俺には妹もいるんだよ〜〜とかさ、
言っちゃおうか?」
「うっ、」
「彼には言ってないんだろ?」
「うう〜」
これはもう、流星にやられた。
「三枝のお兄さん?」
納得いかないように、
眉を寄せたままの安藤君に曖昧な笑みを見せた僕は、
大人しく三枝君と流星に挟まれて、
その美味しいと評判の
パンケーキモーニングのカフェに向かった。
「ここだ」
と安藤君が指した先は、
昔の蔵風の外観の二階建ての建物。
白い壁に下半分は海鼠の模様。
重そうな蔵戸は開いていて、中にもう1つ片引きの大きな硝子の框戸がある。
「わあ、素敵な店だ~」
と思わず声に出てしまった。
引き戸を、開けた途端に言った声が割と大きかったらしく、
中のどっしりした格子柄のカウンターの中に立っていた男の人に笑われてしまった。
恥ずかしいと俯いた僕に、
かかった声。
「杏果?、あれ?、おはよう〜」
え?と顔を上げると
そこには、満面笑顔のえーすけがいる。
「え?えーすけ?なんで?」
「おう、俺、ここでバイト始めたんだ。
よう〜王国に、へー流星まで
どんなチームなの? 」
僕たち3人を見て、全員知ってるえーすけは少し驚いたように疑問を口にした。
お互い顔を見合わせながら、なんと言ったら良いか……
3人が3人とも考え中。
「 ま、とにかく、いらっしゃいませ!」
とえーすけが声をかけると、玄関から一段下がった奥の広間から男の人が1人出て来た。
「 いらっしゃいませ、三名様ですか?」
凄いな、この人もイケメン。
柔らかそうな笑みを浮かべて、
深いグリーンのシャツに黒のカフェエプロンを、腰につけ、漆黒の長めの髪も美しい。
少しの間見ほれてた僕に、安藤君と流星が揃ってなにやらちっと舌打ちしたような……
3人です。という流星と
2人ですから。という安藤君に挟まれた僕は、今度こそ本当に真っ赤になって、俯いてしまった。
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