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第52話
閑話 パンケーキはやたらとホットでした その3
固まった僕に手助けしたのは、やはり幼馴染のえーすけで。
その、イケメンのボーイさんに、
「 うーんと、すみません、カウンターに案内してもらって良いですか? 」
って、言ってくれた。
アイアンの脚とどっしりとした木の天板のテーブル間を縫って、
お店の奥の、レンガの壁で囲まれたレトロなオーブンがある前に、
漆黒の塗装をされたアンティークウッドのカウンターがある。
そこに案内されて、何故か僕だけ椅子をボーイさんに引かれて、すんなり座った。
両側に立ってる安藤君と流ほしが益々眉間に皺を寄せて僕を睨んでる。
それでもサッと2人で僕を挟んで座り、カウンターの奥に入ったボーイさんから水とメニュー受け取って、
3人で並んでメニューを眺めた。
なんだか、背中からの視線が痛いんですけど。
女性が多めのお店で、異様な3人の男連れ。
きっと目立っているんだよね。
気を取り直してメニューを見て、
沢山の種類のソースのかかったパンケーキに
「うわわ〜おいしそう〜!」
と声をあげた僕にボーイさんは、
「パンケーキと飲み物は好きなものとセットにできますから、
モーニングにセットされてないものでも、大丈夫ですよ」
と優しく声をかけてくれた。
嬉しくなってコクコク頷く僕を見て、流星が一言。
「手懐けられんなよ……」
と呟くと、安藤君もその後、
僕の顎に指をかけ安藤君の方に僕の顔を傾けさせて、
「ここ、俺の奢りだから、な」
と目を合わせる。
僕越しに眼をバチバチさせてる2人に困惑しながら、なんとか3人注文した。
パンケーキはそれはそれはホットで、ふかふかでほの甘くて、美味しい。
のに、
お互いを牽制しあってる2人の間で、ギクシャクした会話を必死に繋ぎ、居た堪れない状態で、パンケーキモーニングを食べたのであった。
安藤君と流星が、えーすけ相手に会計で又、揉めてる間に、
帰り際、微笑んで"又来てください"と小声で僕に言ってくれたボーイさんの笑顔を前に、今度は1人で来よう……と、心に誓った。
(そう言えば、安藤君に結局流星が兄貴じゃないという誤解は解けなかった !うう〜)
その後、安藤君はえーすけから、本当の話を聞いたらしい。
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