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第71話
パンケーキファイトとデートの日
その6
屋上に2人きり。夏の始まりの軽い風が吹いている。
「 ありがとう、大切にするよ 」
その言葉と一緒に僕は安藤君の胸に抱き寄せられていた。
硬くなってしまってる僕の身体を優しく抱きしめて、
髪の中に手を入れて、うなじを触る。
その触れ方が気持ちが良くて、僕は安藤君にもたれかかったまま、
このままで、と願ってしまう。
どのくらい時間が経ったのか、
気がついたら月が真ん前に上がっていた。
安藤君はそっと僕の額にキスをする、
安藤君とキスをするのは2回目。
だから、
物足りなくて、顔を上げその先を催促する僕。
自分でもこんな事するなんて思いもしなかった。
安藤君は僕に目を瞑るように目の上にキスをすると、次は鼻先、そして
目を瞑って待っている僕の唇に軽く触れる。
あっと目を開けると、目の前に安藤君の黒い瞳、そこに写っているのは僕。
どちらともなく唇を寄せて合わせる。
少し冷たい安藤君の唇に、暖かい僕の唇。
2つの温度が溶け合った。後は夢中で抱きしめあった。
それだけで幸せだった。
僕はそれだけで……
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