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第80話
合同撮影会 その9
赤くなった泉君はそれでも気丈に
「 大丈夫! 」
と言い切って控室に入ってしまった。
ほとんどの人たちは今の騒ぎには気づかなかったようだ。
ばらばらとスタジオを後にしている。
中には未練がましく僕の方を見ている人もいるけど、
小野さんに追い払われていた。
小野さん役に立つんだw
トイレに行きたくなった僕はみんなが使うだろうトイレとは別の方のトイレに行くべくスタジオから出ると、
そこにはさっきの男が立っていた。
とっさに流星の姿を探したけど見当らない。
「 君は、さっきのモデルの子だね 」
えっ?僕に声かけてる?
黙っていると、近寄ってきた男がおもむろに帽子を脱いで、
「 お願いがあるんだ……」
「 ? 」
「 一緒にモデルやってた子は知り合いかい? 」
僕はかぶり降った。
「 いっしょに着替えた? 」
そこまで聞かれて答えるのはまずい。
黙っていると、
「 ああ、ごめん 」
とサングラスも外す。
え?え?え!この人、俳優のあの人?
人違い?よく似てるよなぁ。
「 私のことがわかる? 」
「 はい、もしかして俳優のひとですよね 」
「 そう、怪しいもんじゃないよ 」
っとフット眉をあげる姿はスターそのもの。
どうしてこんな人がここに?
「 君にお願いしたい 、これを 」
上着の中から取り出した封筒を僕に差し出した。
「 かれに、かれに渡してほしい 」
彼って誰だろ……。
「かれって? さっきのあなたが話してた相手のかれ?」
「 そう、そうだ、かれにこれを 、
あっ、わたしの連絡先はこれに 」
頼むと必死に頭を下げて、僕の手に封筒を握らせる。
なんのことかはさっぱりわからはなくてもこの人の一生懸命さは理解できた。
「 この封筒をかれに渡せば良いんですか? 」
「 うん、でも素直には受け取らないと、思う 」
え?なんか少し面倒そうな、
「 封筒を渡して中身を見させて、かれを説得して欲しい。
わたしと会って、そして話し合って欲しいと」
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