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第85話
合同撮影会 その14
「 棒棒鶏、酢豚、エビチリ、かに玉
全部3人前、と餃子6人前 あっそれと焼きビーフンも3つ」
注文はいつもの勢い。僕たちには慣れた事だけど、お店の人は淡々と復唱し注文は流れて行く。
次々と料理が運ばれてくる。
「 ここは出て来るのも早くていいのよね〜 」
とご満悦な様子の陽子さん。
その向かいで、ふだんは飄々としている和也さんが今日は落ち着きがない。カウンターの奥を見ながら眉間にシワを寄せてそわそわしている。
ため息までついてるのに、ビールジョッキを空けてから紹興酒に変わった女史2人はまったく気にする様子もない。
「 和也さん、どうしたの? 」
「 ああ、杏果、すこし疲れたかな、俺も 」
もともと造作の整ったアンニュイな顔が更に色気を帯びている。
「 つぶれんの早いっすよ、和也さん 」
と 話しかける小野さんに和也さんは任せ、
「 …本題に入ろか 」
酒をセーブしてたらしい流星か小声で話す。
「 で、どうしよう? 」
と応えると何かを考えてた様子で、
「 AVの話から入るとしても、やっぱり短いデモテープくらいないと… 」
「 な〜に〜〜AVデモテープって 」
姉貴はどうしてこんな時に地獄耳なのか、
「 そ、それ、ほらさ 」
さすがの流星もその先が続かない。
「 ほらほら、弟たち、お姉さんは聞き捨てならないぞ 」
陽子さんまで
「 かわい子ちゃんとイケメン君でAVのデモテープ?これは事件だよね 」
と のりのりでくいついてくる。
4人の視線を浴びてボソボソと白状する羽目になった。
撮影会であったあらかたの話を終えると姉貴がひとこと
「 じゃ、今 嶺さんにラインしてみるわ、暇なら来るかもしれないし 」
「 え?‼︎ 」
「 え!⁉︎ 」
「 だって、泉くんのこと、どうにかしないといけないなら、嶺さんに泉くんと会わせて欲しいって頼むしかないじゃない? 」
あまりの正論で反論もできなかった。
即行動の姉貴はライン流してる。
「 あっ、来るって 」
「 嶺さん、暇だった?早いわね 」
「 うん、可愛いイケメンの弟2人紹介するわよってうったからね 、写真付きで 」
「 うわーそりゃすぐくいつくわ 」
豪快に笑う2人の女史。
あとの4人の男どもはまさに口を開けてポカーン状態。
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