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第102話

プールでデートは危険です その12 ジュゴンにマナティーに、 大きな水槽に、大きな体をゆったりと漂わせて、 「 海の怠け者だな、まるで。 三枝、こう言うおっとりとしたもの好きだよな 」 「 そうなんだ、ゆったり漂っていて、優しそうで、大好き 」 「 もう一回言って 」 「 え? 」 「 大好きって 」 「 だい、すき 」 赤くなった僕の頭をポンポンとかるく叩くと、後ろ暗がりのところにあるベンチにさそわれる。 ちょっと腰をかけるタイプのベンチだから、男2人で寄り添っていても怪しまれない。多分。 暗がりの中で1番前の膨大な量の海水の中で泳ぐ生物たちを見ながら、安藤くんはぼくとしっかり恋人つなぎで手を繋ぐ。 「 杏果、どう? 」 ( あっ、名前呼び!うわー) 「 僕とっても好きだよ 」 名前で呼ばれると、ひどく幸せな気分になるね。 暗闇の中、四つの目が見つめる前に泳ぐジュゴンやマナティー。夢を見ているような気分に、 どちらともなく、キスをする…… 周りにわからないよう繰り返すキス、キス、キス。 好きだよという言葉を胸に秘めて 彼の方に頭を預け、幻想の中にいるみたいな世界を楽しんだ。 しばらくするとガヤガヤとうるさい声を出す団体が入ってきた。 「 出る? 」 と言う一言で、出口に向かった。 「 なんか少し腹減らない? 」 「 うん、なんか減ってるような気がする 」 来てからスナックみたいな食べ物ばかりだったので、少しちゃんとしたものを食べるかと、レストラン街の方へブラブラ歩いて行く。 と、僕らの脇を後ろから警官と施設の人が駆け抜けて行く。 なんだろ、彼らが向かった先は、天津で有名なお店の方だった。 僕らもそこに行こうとしてたから、驚いて後についていった。 ✨ここで皆様に注意✨ 日本でジュゴンが生息する水槽は三重県の鳥羽水族館だけです。 マナティーの方は何箇所かあるようです。 このお話では両方とも湘南にいることに……それも多頭で(ずうずうずしい) 夢ですw

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