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第140話
いよいよ、できたデモ映像を持っていざ行かん その1
おなかを壊してまで撮ったデモ用の映像は小野さんが急いで編集するらしく、その場で僕には見せてもくれなかった。
「 一回くらいは嶺さんていう人に見せる前には僕にも見せてよ 」
「 うーん、そんな時間あるかな〜
あ、小野ちゃん明日の夜なら良いって 」
さっさと嶺さんに連絡取ったらしい流星はそう答える。
「 うわー明日の夜?俺、徹夜じゃないか 」
渋い顔をした小野さんだけど、この人仕事は速い。だから姉貴が一緒にやってる。
「 杏果も、いいな。明日の夜、7時に広尾の、駅な 」
「 え?そんな急に、勝手な」
「 って、早い方が良いだろう?泉、捕まえたいんだろ?嶺さん忙しい人だから、明日時間が取れるって幸運だから。それに少し聞き出したら泉も用事があって夜来るらしいから 」
「 わかった、泉君が来るなら、僕は覚悟を決める 」
小野さんがまた大笑いしてる。
「 なんか悲愴だな〜〜 」
「 だって、はだかの!それも、エッチな映像を殆ど知らない人に見せるんだから! 」
そう力説してから、僕はふっと考えた。
なんでこんなことまでしなきゃなんなかったのかな?普通に泉君に連絡とりたいって言っても良かったんじゃない?一緒に撮影会まで出てたんだから?
じとっと流星を見ると、
流星は知らん顔をして、
「小野ちゃん帰ろう、腹減った〜〜
俺も編集手伝うからさ、
杏果、明日な! 」
なんて言いながら、慌ただしく小野さんを連れて帰っていった。
怪しい、流星。
なんか、後ろめたそうな……
あっ、あの2人、掃除もしないで帰っちゃったじゃない〜〜
姉貴の部屋とお風呂と、綺麗にしとかなきゃ姉貴にしばかれる。
僕はこの疑いはさて置いといて、早速掃除に取りかかった。
それにあの預かりものもしっかり渡せるように用意しておかなくては。
きっと、あれが泉君にとって大切なものになるかもしれない。
よし!頑張ろう❣️
気合いを入れ直した僕だった。
いよいよ、できたデモ映像を持っていざ行かん その2
ベッドシーツやタオル、水着はネットに入れて洗濯機に放り込んで、あらかたの掃除が終わった頃、
ピロリン、と音がしてラインが入った。 あっ、安藤君からだ。
" 今どこ?"
"自宅"
"行ってもいい?"
安藤君が今から来るの?嬉しい!
"大丈夫"
"30分くらいで着く"
"了解です"っと、うち込み最後に、
クマ🐻のペコリとお辞儀をしているスタンプをつける。少しラインにも慣れてきたかも。
自分の部屋に掃除機をかけ、最後に雑誌をまとめてブックスタンドに入れていると、インターホンの鳴る音がした。
慌て二階から駆け下りると、案の定最後の三段で踏み外し
ドッターーン‼︎
階段から落ち、したたかにお尻を打った。今日酷使したお尻は只でさえだるいのに大ダメージ。打ったお尻を抑えながら玄関ドアを開けると、そこには爽やかに安藤君が立っていた。
「 大きな音したけど、落ちたの?大丈夫? 」
と言いながらお尻をさすっている僕の腕をとって軽くハグをしてくれる。
もうそれだけで痛みを忘れそう。
「 あ、うん、いらっしゃい。急いでたから階段から落ちちゃって 」
開いたドアを片手で締めると安藤君は僕の身体をさらに抱きしめる。
「 大きな音がしたけど、落ちた音だったんだ。
今、おうちの人は?」
と抱いてる僕の顔をあげさせる。
キスの期待でドキドキしている僕
「 今日は誰もいない 」
と答えると、靴も脱いでいないのにその場で僕の唇に唇を合わせると
「 会いたかった…… 」
と囁いた。
キスを交わしながらしばらく夢中でお互いの身体をさすりあい、熱い熱を確かめ合う。
その時
グーッ
と、朝から撮影でほとんど昼もきちんと食べずに過酷な撮影をした僕のお腹が鳴った。
あっと、赤くなった僕に
「 杏果、お腹空いてるの? 」
と笑いながら身体を少し離す安藤君。
「 お昼食べてないから 」
と言うと、それは大変だ、
と自分の背負ってたバッグを下ろす。
まだ靴を履いたままだったのを思い出して安藤君を家にあげると
バッグから何か包みを取り出して安藤君が僕に渡す。
「 今日バイト先の店で帰りにパンケーキサンド貰ったから 」
「 あっホント?大好き‼︎ 」
と言ったら又盛大にお腹が鳴った。
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