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第142話

いよいよ、できたデモ映像を持っていざ行かん その4 お互いの男性器の昂まりの匂いを嗅ぎながら舌を絡ませて、触れる肌に、溢れる唾液に、どんどんなにも考えられなくなっていくのに。 でも、安藤君は絡めていた舌を解き、僕の唇にすっとくちびるを押し当て、 椅子に僕を抱いたまま腰を下ろす。 僕を腿の上に、跨らせたまま。 「 杏果、今日は聞きたいことがあって 」 両方の頬を優しく両の手のひらで包み、 潤んだ僕の眼にすっと切れ長の眼を合わせる。 不安になる、こんなに身体を重ね、溶けるほど絡みあうことのできる安藤君に、僕はあまりにも、 秘密が多い.… 「 ご、ごめんなさい 」 「 なぜ? なんで?」 その先が言えずにおし黙る僕は 安藤君に優しくうなじを撫でられながら、どうして良いか、わからない。 「 じゃあ、僕の方から質問ね。 あのさ、杏果は下の毛を剃ってるよね、それもすごく綺麗に… だから水着を着ても綺麗なんだけど. 恋人候補の俺としてはさ、 理由を知りたい 」 益々下を向くしかない僕。 それを話したら、色々な恥ずかしいこと話さなくちゃならない。 それも、僕が全部選んでやってること。 嫌われる。女装して、女の子の下着や服を着て、平気な僕。 こんな僕は安藤君に嫌われる…… 言えないよ。 黙って、僕の話すのを待っていてくれる安藤君。 僕はこの好きな人に応えられない。 冷たくなる身体、辛く悲しくなるこころ。 「 杏果、、、好きだよ。 でも、お前のことを知りたい、 」 好き好き好き!と安藤君にしがみつく しかできない。 沈黙が拡がる。 「 わかったよ、杏果。 今日はおしまいにしよう。 杏果の部屋は二階だね」 手を繋ぎ立ち上がり、右手は肩を抱きお腹に左腕を回し、離すものかと隙間もなくふれあいながら二階への階段を上がる。 僕は上がる階段の、先が、とても怖い。 どの部屋にする?姉貴の部屋は絶対にダメ。さっきまで精を吐き出した、その空気が濃厚なあの部屋で安藤君と抱き合うのはいや。 僕の部屋を開けると、 安藤君がおやっという顔をした。 「 ここだれの部屋?杏果の部屋? 全然違う 」

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