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第155話

いよいよ、できたデモ映像を持っていざ行かん その17 「 いよっ 」 と言いながら、声も姿も軽そうなおじさんが入ってきた。 金髪の髪を後ろで括り、顔には無精髭としか思えないごま塩の髭。 欠伸を嚙み殺しながら僕の横にどさっと座る。ヨレヨレのTシャツにダメージジーンズというより単にボロボロまで履いてるとしか思えない姿。 「 浩二さん、こんばんは 」 「 おう、小野、久しぶり 」 「 安来、お前昨晩から寝てない? 」 「 おお、三本まとめてだからよ、疲れたよ。って、嶺の言ってたビデオって?小野が撮った? 」 この人たちの話はどんどん進んでいくんだな、と感心してると。急に僕の方を向いて、 「 やけに美人の彼氏がいるじゃん!なに、この子の?」 そこで初めて嶺さんが僕らを紹介し始めた。安来さんが監督なんだ。流星は慣れたもので自分で積極的に安来さんと言葉を交わしてる。 「ということで、拝見するか 」 と嶺さんが仕切ると、 遅くなりました〜ともう2人ほど人が入ってきた。 え?こんなに大勢であれを見るの? 小野さんが持ってきたノートブックから壁掛けのディスプレイに動画を映し出す。 「 最近はホント簡単に無線でとばせるから便利になったなぁ 」 と安来さんが呟く、 「 画素も見劣りしないですね 」 と僕と流星の絡み合いを見ながら名前もわからない人が喋る。 小野さんの編集でぼかさなきゃいけないシーンは加工してあるけど、顔がさらけ出されてなくても、生々しい肌の色、喘ぎ声。BGMは入れてないので肌に唇の擦れ合う音、なにかの粘液が手で指で扱き出される音…… 皆黙ったままで映像だけを見ている。 僕は画面なんて見てられない、音も再生されてるから耳も塞ぐしかない。 周りの気配を感じないように目と耳を閉じた僕にも、隣に座る安藤君が酷く緊張してるのだけはわかった。

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