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第156話
いよいよ、できたデモ映像を持っていざ行かん その18
安藤君が急に立ち上がったのに、目と耳を閉じていた僕はびっくりした。
安藤君を見上げその見つめる方をみる、と、
あのシャワーのシーンだった。
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一気に肩から腿まで水着が下げられ、
シャワーが突然頭上から降ってきて、僕の身体は流星の腕で強引に抱きしめられた。
胸とペニスは流星の手で隠されたけど、結局僕はカメラの前で全裸。
泣きそうな僕の唇を優しく流星がはんでくる、くちびるが降りそそぐシャワーの下でくっついたり離れたり、
息が苦しくなって口を薄く開けたら、堂々と流星の舌が入ってきて、僕は舌を絡められ口中をなぶられた。
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撮られている時には一瞬に思えたこのキスの時間が続く。
映像の中で見ると、まるで恋人同士のようなシーン。黒髪のウイッグを被ってるから自分なのに自分じゃない感じがする。
安藤君は唇を噛み締めながらもそのシーンからきつい眼差しを離さない。
怖い、これ見てなんて思われちゃうのか、今更ながら本当に怖い。
勇気を出して、立ち上がり
「 あ、安藤、くん…… 」
小さく声をかけると、
安藤君は一瞬目を瞑り、何か呟いた。
え?と不安な声を出した僕の手を優しく握ってくれたけど……
僕の方には目を向けない。
誰かが、フーッと息をついた音がした。少し雰囲気がざわついてる。
監督さんたちも小声で何か話し合ってる。
なんだろ?
そして、最後のあのいやなシーンが始まった。濡れた水着を着たおかげでストリップしながらシャワーの下でお腹が痛くなったやつ。
映像の中でお腹痛いのを我慢してる僕の顔を見るとあの時の悔しさを思い出して腹が立ってきた。
でもこれって不思議。
黒髪のウイッグを被った僕と素の僕と、なんか微妙に感じが違って2人なのか1人なのか曖昧で、すこし面白いかも。
あの時双子設定とか言った流星をバカにしたけど、こういう効果を狙ってたんだ。あいつ、なかなか考えてるのね。
ってそんな場合じゃないよね!
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