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第168話
いよいよ、できたデモ映像を持っていざ行かん その28
僕らの前にやってきた泉君。店に来て着替えたらしくボーイの制服を着ていた。
そして視線はずっと床を見つめている。
「 バニーちゃんも似合いそうなのに、ボーイなのな 」
と言った嶺さんを軽く睨みつけて真山さんが、
「 さぁ、どうぞ 」
と、僕らに続けろとばかりにその後のことを投げてよこした。
渡しても封筒は受け取らないだろうと思った僕は、封筒を机の上に置いたまま、伝言の方を先に伝えることにした。
黙って僕の説明を聞いていた泉君。渡せた封筒。
だけど簡単にその封筒を受け取った泉くんの魂胆にはその先の要求をされるまで気がつかなかった。
「 僕と話をしたいの? 」
「 うん、そう言ってた 」
「 へー
この人が僕と付き合ってくれるんだったらいいよ 」
泉君が指差す方を見て僕は固まった。
泉君が指差していた方向には安藤君がいたから。
声が驚きでかすれる……
「 え?付き合うって? 」
「 彼が僕の恋人になってくれるなら、会うよ 」
そ、そんなこと
周りを見ると、
嶺さんと真山さんは表情もなく、流星と小野さんは驚きながらもこの展開に興味津々という顔。
誰も助けの手を差し伸べてはくれない。縋るように安藤君を見やると、
ここに着いてからずっと僕と目を合わすことを避けていた安藤君は、
僕の目をまっすぐ見ると、
「 それで、会うんだな 」
と低い声で言い放った。
え?ウソ!
泉君は微笑みながらゆっくりと答える。
「 そう、会って、ちゃんと話をしてみるよ。
一緒に来てくれる? 」
なんで?!
「 恋人にはなれない。まだ君のことよく知らないから、
でも付き合うことはできるよ 」
そ、そんな‼︎
「 うーん。お堅いんだね、
外側ももろ僕のこと好みだけど、
中も好きになりそう、
いいよ、まずはおつきあいからで、今日からね! 」
「 だめだよ! 」
我慢できずに声をあげた僕に
「 なんで? 」
と冷たい声で泉君が尋ねる。
「 よく知りもしないのに、そんな条件で、付き合えなんて 」
「 君はなんなの?僕はこの人と話してる。彼が良いのだから君には関係ないよね 」
この場で安藤君のことを恋人だと、僕の恋人だと堂々と紹介できない僕は、
言葉に詰まった。
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