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第177話

惑う こころ その6 心が冷えるってこういうことなんだ…… 血の通わなくなった指をくちびるに当てて、つばを飲み込む。 どうしよう、見られたくない、どっかに隠れなきゃ。 となりですっと冷えた空気に和也さんが僕を見る。 和也さんは僕の太ももを掴んで、 「 ちゃんと聞いてこなきゃ、逃げると辛くなるよ 」 「 できない、できないよ 」 奥の僕らには全く気づかず、安藤君は店の入り口近くのカウンターに泉くんを座らせてカウンターの中には入っていった。 どういうことだろう?ここでアルバイトしてるの? わけがわからないよ…… 「 杏果、逃げるなよ、ほら、餃子美味いよね 」 あーんとばかりに箸に取った餃子を僕に差し出してくる。 目の前の餃子を、パクリと食べた。 隣のおじさんがそれを見て目をパチクリしてる。 「もう、和也さん、やめてよ〜」 でも、なんか少し浮上したかも。 せめて、話しだけでもしなきゃ。僕は恋人をやめたつもりはないんだから。 安藤くんが厨房から出てくると、綺麗なお姉さんのほかにもう1人いたおかっぱの女の人は挨拶しながら店を出ていった。 安藤くんはやっぱりここで働いているんだな、とぼんやり眺めていると、 「 杏果、ラーメン何にする? 」 「 え?ラーメン食べるの? 」 「 食べにきたんでしょ 」 と和也さんの口元が魅惑的に弧を描いた。 なんか、和也さん、、その顔、怖い。 「 すみません! 」 と和也さんがわざわざ安藤くんに向かって声をかけた。 ところがちょうどその時新しい客が入ってきて安藤くんがそっちに向いたので、答えたのはカウンターの中の厨房に立つおじさんの方だった。 「 はい!オーダー? 」 和也さんは味噌ラーメン、僕は醤油ラーメンを注文した。 泉くんの前にラーメンを出してる安藤くんにさっきの僕らをじっと見めた男の人が声をかける。 「 おうこ、今日はお手伝いか?いい子だなぁ 」 「 うん、兄貴が風邪ひいちゃって厨房にひとが足りないから……」 「 それで京ちゃんが厨房入ったんだ 」 親しそうに話してる。よく来るひとなんだな。 あれ?手伝い?兄貴?え? びっくりして眼を見開いた僕に、 今頃気がついたのかと和也さんが笑っている。

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