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第178話
惑う こころ 7
「 知ってたの? 」
「 気がつくよね、会ったのはお店の前、綺麗なお姉さんにはよく似てるし。まぁそうかな?とは思ってたけど 」
「 けど? 」
「 あの厨房に立つおじさんではっきりしたよ、声そっくりじゃない。
杏果、知らなかったの?
あー、だから素直についてきたんだ 」
酷い!安藤くんから何にも聞いてない!それにひどいひどい、泉くんは自分の家に連れてきてるなんて!
アタマにきた。
立ち上がったその時、ラーメンがカウンターの中から出た。
「 はいお待ちどう! 」
湯気のたったラーメンには勝てなかった。
「 うわぁ、細麺で美味しい 」
「味噌はすこし太いな、よく絡まるようにか 」
「 スープは?ちょっとちょうだい 」
僕はそういうと和也さんからレンゲをもらってスープを啜る。
「 味噌も美味しい、今度は味噌にしよ、和也さんもスープ飲む?
あっ、麺ものっけてあげるよ 」
置いてあった小椀に
「 スープと麺と、焼豚も1枚ね 、大サービス!」
と呟きながらよそっていると
笑い声がした。
誰?と思って見上げると、カウンターの中でおじさんが笑ってる。
え?と
ドギマギすると、
「 そんなに美味しい? 」
と聞かれたので、盛大に頷いた。
僕も和也さんから小椀に味噌の方をよそって貰った。
「 二倍得した気分 」
と言うと和也さんに
「杏果はまったくな、飽きないよ」
と軽く頭を撫でられた。
その時頭上から声がした。
「 ね、うち来ない? 」
は?
「 いやいや、言い方間違えた、
うちで働かない?
学生さん?だったらバイトしないかな~ 」
「 え、僕が?ですか? 」
「 うん、そう。明るいし朗らかだし、なかなかいいよね、君 」
和也さんと僕は顔を見合わせた。
「 杏果には無理、かも 」
ボソッと言う和也さん。
「 僕、バイトとかしたことないし 」
「 平気だよ、注文聞いて、運ぶだけ、かたしてテーブル拭いて、会計はうちのがやるからさ 」
なんでもないことように言うおじさんに、家でやってることの延長かもと思いながら、ふっと頭をよぎったことで、決めた!
「 僕、ここで、バイトします 」
隣で驚く和也さん。
「 杏果〜〜大丈夫か? 」
僕にウインクして喜ぶおじさん。
「 なにカウンター越しにナンパし、、
え?! 」
その声は安藤くんだった。
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