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第179話
惑う こころ その8
目があった、やっぱり嬉しい。
「 なんで、三枝が、、」
そのあと言葉が出ないの?
なんで杏果じゃなくて、三枝って
嬉しかった気持ちが風船のように萎んだ。
「 ナンパ?そうそう仕事にナンパよ 」
「 何言って 」
「 大丈夫、バイトしてくれるってことだから 」
「 だめだ、三枝はダメだよ 」
黙って様子を見ていた和也さんが
「 安藤くん、これはきみが横から口出すことじゃないんじゃないの? 」
というと、
「 すみませんね、そうだね、とにかく奥のテーブルが空いたからそこで少し話をしようか 」
とおじさんに言われ、和也さんはすっかり凹んだ僕の腕を引っぱって奥の方に行くように促した。
こじんまりとしたテーブル席に座ると、眦から出てる涙を紙ナプキンで拭いてくれる和也さん。
「 あれ、泣いてた、恥ずかしいな 」
「 よく考えて、辛くなるのは杏果だよ 」
とポンポンと僕の肩を叩く。
そこへ安藤くんが麦茶を運んできた。
「 2人にしてもらえませんか 」
「 ダメだよ、きみは杏果を傷つけた 」
「 あ、和也さん、違うから、まだ違うから 」
「 だから話がしたい 」
「 こんなにほっておいて、今更話? 」
なんか険悪な雰囲気になってくる。
「 おうこ、皿洗いたまってる 」
と言いながらおじさんが来た。
少し悔しそうな顔をして
安藤くんは厨房に戻って行った。
「 おうこと知り合いなの? 」
僕は頷き
「 と、もだち、同じ大学です 」
と答える。間違ってないよね。
「 そうなんだ、ますますバイトしてくれて、なんか縁がありそうだな。
それで、さっきの話は進めて大丈夫? 」
和也さんの心配そうな視線は感じるけど僕は
「 はい、大丈夫です 」
と答える。ここで怯んでいては変わらないんだ。僕は安藤くんが好き。
こんなやり方間違ってるかもしれないけど、教えてくれないのなら知ろうとすれば良いんだよね。それが僕の結論。
それでは名前を教えてください
僕は、三枝杏果と言います
ほう、きょうかってどんな字?
ここに書いてもらおうかな
ノートを差し出されたのでそこの項目通り欄を埋めていく。
その間に和也さんがおじさんに話しかけるのが聞こえて来た。
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