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第181話
惑う こころ その10
「 ふーん、物分かりがいいね、いい人なんだね あんた」
「 杏果、良いのか? 」
和也さんに僕は深く頷いて答える。
「明後日、彼の自宅か事務所か、
まだわからないけど、時間は夜だと言ってるから 」
「 わかった。連絡は?どうすればいいの? 」
ちらっと安藤くんを見た泉くん。
そんなことにも僕の心はざわつく。
いやだ、いやだ……
「 俺から連絡するから 」
と安藤くんがやっと口を開く。
ダメ!と遮り振り向きざまに、
「 仕方ない、俺のラインこれだから、フリフリしてよ 」
そういうとスマフォを取り出して僕に突き出す。
なんか、全然印象が変わったんだけど。こっちが泉くんの本当の姿なら、預かりものしたのは失敗だった?
スマフォを取り出した僕の手はすこし震えていた。
「 これでよしっと、直前に逃げたりしないでよ!
おうこ、遊びに行こう、もう仕事終わったんでしょ 」
と出て行こうとするのを止めて、
「 俺は三枝に話があるから、泉は少し待ってて 」
安藤くんは泉くんに優しく話しかける。
そっか、僕のことは三枝だし、話があるけど終わったら泉くんと遊びに行くんだ。
お腹の中から、いやだ!って叫び出したいのをぐっとこらえる。
「 泉くん、前のカフェで僕とお喋りしてよう 」
「 は?おうこがこの人に何を話すのか聞きたいからここにいる!」
「 ほらほら、嶺さんからの次の撮影会のお願いもされてるし、仕事の話しもしよう、おいで」
仕事の話には逆らえないのか、泉くんを強引に連れ出してくれた。
安藤くんと2人だ、何を言われるんだろうと下を向いてしまう僕。その時
「 おうこ、あんまり話を拗らすな、お前1人じゃ何にもできないぞ 」
驚いた、さっきの男の人が口を挟んできた。
ビクッとした安藤くん、ため息を1つ吐くと僕の隣に座った。
え?と顔を上げる僕に、真剣な眼差しで
「 杏果、気をつけろ。
あの子の周りは本当にやばいから、
本当は明後日も心配なんだけど、どうしても聞かない 」
声を抑えて早口で語る安藤くん。
こんな安藤くん始めてかもしれない。
「 悪いな、横で聞いてたんだが良かったら話してくれないか? 」
僕がびっくりして眼を見張ると
でっかい眼だなと笑われた。
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