180 / 325

第181話

惑う こころ その10 「 ふーん、物分かりがいいね、いい人なんだね あんた」 「 杏果、良いのか? 」 和也さんに僕は深く頷いて答える。 「明後日、彼の自宅か事務所か、 まだわからないけど、時間は夜だと言ってるから 」 「 わかった。連絡は?どうすればいいの? 」 ちらっと安藤くんを見た泉くん。 そんなことにも僕の心はざわつく。 いやだ、いやだ…… 「 俺から連絡するから 」 と安藤くんがやっと口を開く。 ダメ!と遮り振り向きざまに、 「 仕方ない、俺のラインこれだから、フリフリしてよ 」 そういうとスマフォを取り出して僕に突き出す。 なんか、全然印象が変わったんだけど。こっちが泉くんの本当の姿なら、預かりものしたのは失敗だった? スマフォを取り出した僕の手はすこし震えていた。 「 これでよしっと、直前に逃げたりしないでよ! おうこ、遊びに行こう、もう仕事終わったんでしょ 」 と出て行こうとするのを止めて、 「 俺は三枝に話があるから、泉は少し待ってて 」 安藤くんは泉くんに優しく話しかける。 そっか、僕のことは三枝だし、話があるけど終わったら泉くんと遊びに行くんだ。 お腹の中から、いやだ!って叫び出したいのをぐっとこらえる。 「 泉くん、前のカフェで僕とお喋りしてよう 」 「 は?おうこがこの人に何を話すのか聞きたいからここにいる!」 「 ほらほら、嶺さんからの次の撮影会のお願いもされてるし、仕事の話しもしよう、おいで」 仕事の話には逆らえないのか、泉くんを強引に連れ出してくれた。 安藤くんと2人だ、何を言われるんだろうと下を向いてしまう僕。その時 「 おうこ、あんまり話を拗らすな、お前1人じゃ何にもできないぞ 」 驚いた、さっきの男の人が口を挟んできた。 ビクッとした安藤くん、ため息を1つ吐くと僕の隣に座った。 え?と顔を上げる僕に、真剣な眼差しで 「 杏果、気をつけろ。 あの子の周りは本当にやばいから、 本当は明後日も心配なんだけど、どうしても聞かない 」 声を抑えて早口で語る安藤くん。 こんな安藤くん始めてかもしれない。 「 悪いな、横で聞いてたんだが良かったら話してくれないか? 」 僕がびっくりして眼を見張ると でっかい眼だなと笑われた。

ともだちにシェアしよう!