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第183話
惑う こころ 12
その先は何?
黙ってしまう安藤くんの眼はじっと僕を見つめている。
「 そのクラブってのはどこのだ? 」
安藤くんがクラブの名前を言うと
聞いたダンさんの顔が強張った。
「 新宿のか? 」
「 そう、男のポールダンサーがいるところだよ 」
「 泉とかいうのと前に会ったのもそこか? 」
「 いやそれは違う、そんなとこまで遊びにはいかないよ、ここで遊ぶ場所は充分だったから 」
「そこ、真山ってのがいるだろう 」
僕と安藤くんは驚いて顔を見合わせた。
「 会ったのか?真山に 」
「 はい、嶺さん、嶺さんは企画会社の人がで、他にも色々仕事していて、その人に紹介されました 」
「 そうか、真山の所に預かりになってる子なんだな 」
「 嶺さんが言ってたのは、
街でフラフラしてるところを顔に惹かれたオーナーが拾ったらしい、って 」
「 オーナーが拾った? 」
黙り込んだダンさんに
「 真山さんって人と知り合い? 」
と安藤くんが問いかけた。
「 前に取材した中の1人に真山がいた 」
取材……この人ジャーナリストって言ってたな……と
ふっと手元のスマフォを見ると、
20分は経っている。
「 あっ、ごめんなさい。僕、和也さん待たせてるから 」
ダンさんの話も気になるけど、泉くんとカフェにいるはずの和也さんもすごく気になる。
「 そうだな、会うのは今度の金曜日か?
それまでに少し調べとくよ。どうも気になるよな、あの子は 」
そう言うダンさんにお願いしますと挨拶をして店を出た。
杏果
と後ろから声がかかる。
「 もう一度言うけど、会うの、気をつけて。先方がどうしても泉だけ一人でって、そう言ってたのに、お前を連れてくなんて 、何を考えてるのかわからない」
「 ありがとう、大丈夫だよ。加太タケルさんってそんなにひどい人には見えなかったし 」
「 違う気をつけるのは泉にだよ 」
「 え? 」
カフェは混んでいた。見回せば騒ついた店の中でそこだけが冷たく白くて浮いている。
和也さんと泉くんというおとぎ話の絵に描いたような2人の姿、当然注目を浴びるような端麗な容姿の2人。
周りはその2人の仲の険悪さに遠巻きに眺めるように距離を置いている。
この邪悪な雰囲気はなんだろう?
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