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第197話

惑う こころ 26 誰か? と恐る恐る聞く加太さんに、真山さんは一言。 「 怒らすと非常に面倒な、新宿の有名人です。会えばわかります。あっ心配はいらないですよ、口はすっぽんのように噛み付いたら絶対に開かない人ですから 」 と不気味なお告げをした。 それから20分、貝のように口を閉ざした泉君に加太さんが一生懸命話しかけるが全く会話にはならなかった。 インターフォンが響き渡って、 男が玄関に行くと、大きな足音を立てて3人の人が入ってきた。 浴衣のままのサンドラさんと嶺さん? そして、安藤君…… 僕は我慢していた気持ちを放り投げ、しゃくり上げて泣いた僕の肩を 坂本さんが抱き寄せた。 はなせ!という声が響き、 サンドラさんと安藤くんが僕に駆け寄ってきた。 坂本さんの手を捻りあげる安藤くん、そして僕を抱きしめたのはサンドラさん。浴衣から薫るえもいわれぬ麗しい香りに安心して、スーッと涙が引いて行った。 「 あー良かった! 杏果〜心配したわ〜 」 ウンウンと頷く僕の頭を撫でて、安藤くんに、 「 貸し一つな 」 と凄むような声で伝える。 そのギャップに笑うと、 「 笑えるんだ、よし! 」 と真山さんに向き直った。 安藤くんは僕の背中をそっと撫であげて、耳元で 「 今日で終わるから 」 と囁いた。 今日で終わるの?何が? すると、 前からまたサンドラさんの更に凄んだ声が聞こえてきた。 「 真山〜今回の落とし前はどうつけるんだ?この子は私の秘蔵っ子、傷をつけていたら許さないからな 」 「 秘蔵っ子って、お尻の手ほどき受けたから? 」 と隣の安藤くんに聴くと、 「 多分、ね、まだ最後まで習ってないけど 」 と少し赤くなりながら微笑まれる。 久しぶりの安藤くんの笑顔に僕はやっと浮上した。 「 わかりました、三枝さんのことは私が責任を持ちます。ただ、どうしてこんなことになったのか少しはっきりさせたいので待ってもらえますか? 」 と真山さんが言うと、 「 なんか色々メンバーも訳ありそうだし、その杏果を騙した子の訳ありなんだろう。そこにいらっしゃるのは俳優の加太さんだしね。あたしたちは部外者だから外で待ってようか? 」 サンドラさんは加太さんがここにいるのを驚きもしないでそう言った。

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