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第198話
惑う こころ 27
それまで黙っていた嶺さんが
「 泉くんと加太さんとの事が絡むのだったら僕らが聞いてはまずくないか? 」
と心配げに真山さんに尋ねる。
嶺さんに聞かれた疑問に真山さんが答える。
「 泉と加太さんの事で三枝さんに今回のような事が起きたのだったらきっちり責任取らさせなくてはいけないでしょう?
少なくとも泉は三枝さんに危害を加えようとしたのだから、そのわけは知る必要がある」
「 なんなんだよ、わけなんてないよ!三枝が気に食わなかったから脅かしたんだ、それでいいだろ!僕はもう帰る! 」
泉君が急にそう声を荒げると外に出て行こうとした。
その腕を慌てて掴んで
「 話をしよう、いや、話を聞きたい 」
と言った加太さんに、
「 僕にはあんたに話すことは何もない、金くれるって言うなら貰っとくけど、それ以上何の関係も作りたくない 」
吐き捨てるように言う泉君。
真山さんが、スタッフに目配せをして外に出るように促す。
気に食わなかったから脅かした、その言葉に呆然とした僕の腰を抱くサンドラさん。めんどくさいなァと言う顔をしながら僕の手を引いて近くのソファに腰をかけた。
「 三枝君から渡されたと思うが、私は本気だ。養子縁組したいと思ってる 」
「 今更 、僕がどこにいたのかも知らなかったくせに 」
「 泉を産んだあと不安定だった君のお母さんはわたしのマンションから逃げるように元の家に帰ってしまって、わたしはその時長い映画のロケを抱えていて、すぐに君のお母さんを迎えに行くことができなかったんだ」
泉君はバックから封筒を出すと、加太さんの眼の前でビリビリと破いた。
驚いて眼を見張る加太さんに
「そのあと、僕に会いに来た?あんたは母さんが死んだ時にも来なかった、ぼくは1人になったのに」
その時真山さんが口を挟んだ。
「 泉の母親が亡くなったのは確かもう5年も前のことです。施設に入っていた泉が飛び出して街をうろうろしていたところをうちのオーナーが店に連れて来たのが昨年。その間、どうして泉をほおっていたんですか?」
その問いを遮った泉くん。
「そんなのわかってる…僕はあんたに恥をかかせてやろうと思ってたから色々なところで噂になるようなことをしたよ」
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