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第201話

惑う こころ 30 「 逆恨みじゃないか。 加太さん、こんなねじくれたのを養子になんてしないほうがいいんじゃないの? 」 サンドラさんが加太さんを諌めると、 「 やめてくれ、ねじくれていてもいい、わたしの子なんだから 」 「 今ごろなんだよ! わたしの子って!」 泣きながらまだ憎まれ口を叩く泉くんが可哀想に思えた。 僕にイライラしたという事だけでこんなことまでやってしまうほど寂しい生き方してたんじゃないか? 誰にも頼れなくて、 ずっと1人だったんじゃないか? 僕はソファから立ち上がり泉くんのそばに行った。 周りの視線が僕に集まる。 さぁ、勇気を出そう。 泉くんに伝えたいことがあるんだから…… 「 泉くん、僕のうちはね3人家族なんだ。でも、全員血は繋がってない。 連れ子の姉貴と連れ子の僕、それぞれの母親の結婚相手だった父親と血の繋がらない3人で暮らしてる。 泉くんと僕のどこか違うのかな?って考えると、泉くんはお父さんとは暮らさなかったけどお母さんとは5年前まで一緒に暮らしたんでしょう?」 「 そうだよ!それがなんだよ 」 「 血の繋がったお母さんと15歳くらいまで一緒に暮らした。 僕も母が死んだのが小学生のときだったからそれからは血の繋がらない他人と暮らしてる。 他人同士だけど寄り添う。 毎日、朝挨拶して夜帰ってきたら挨拶して、安心できる」 「 だからなに?あんたにはそばに寄り添う人がいるけどお前にはいないだろって言いたいのか! 」 「 そうだね、そばにいて寄り添う人。泉くんはお母さんを亡くしてからは誰がそばにいたの?どこに帰っていたの?」 「 施設だよ!誰も親戚がいなくて、あいつも迎えに来なかった、行くところなんてそこしかなかった、あんなとこは帰るとこじゃない……僕はそこで 」 その後は嗚咽で泉くんの言葉は続かなかった。 真山さんが静かに話しだした。 「 私のこと前にお話しましたね、泉も同じようなことで悩んでいたんです。そういう子が施設にいるというのはどんなに辛いことだったか、私にはよくわかります。人と違う事を隠して隠して、どんなに怖かったか辛かったか、三枝さん、あなたは一緒にいれば血が繋がってなくても寄り添ううことができると言いたいのかもしれないが、わかりますか? 寄り添える人がいなかった泉の気持ち 」

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