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第210話
閑話
小次郎のアイドルは、ニャンニャン
その6
「 うわーこれがテンシンハン?」
「 そう、美味そうだろ? 」
「 はい!美味しそう玉子なんですか? 」
「 そう天津飯は蟹と玉子のあんかけ炒飯。
うちでは白飯じゃなくて炒飯にしてるから、本当なら天津炒飯って言うのかもね 」
「 え、か、蟹?え?
ごめんなさい!そんな高いものを 」
今度こそ厨房とカウンターから大笑いが聞こえた。
「 そんな可愛いこと言ってないで熱いうちに食べて 」
お兄さんも苦笑しながら一緒に座る。
可愛いグリーンピースが3つ乗ったその少し茶色のトロッとしたあんの中に黄色い玉子が光ってる。所々に見えるピンクのが蟹?
おそるおそる端にレンゲを入れるとボワっと炒飯と玉子と餡掛けの良い香りが漂う。思い切って口の中に入れると
口の中で熱々のかに玉と炒飯とが踊る。
ふがふがしながら夢中で食べる僕を見ながらお兄さんがニコニコして、
「 杏果チャン、本当に可愛いねぇ、王国が夢中になるはずだな 」
とえっと思う事を言った。
驚いて喉に詰まったご飯をなんとか飲み込んでいると、
「 杏果チャンは王国のことどうなの?好きなの? 」
とこれまた恐ろしい事を聞いてくる。
聞かれたことに呆然としてる僕に近づいてきたお父さんが耳元で一言。
「 決まってるだろ。恋人なんだから 」
え?!
僕大変なところにバイトに来たのかもしれない……
「 社長!オーダー入ってますよ! 」
とカウンター越しに声がかかるとお父さんも「 はいはーい 」と間延びした声でカウンター前の調理台の方に戻って行った。
僕もそれ以上はお兄さんもなにも言わないので、食べることに専念した。
この天津飯と鳥味の塩ラーメンとの組み合わせは最高。
「 このラーメンは醤油味じゃないんですね 」
「 そう、うちのチャーハンや丼物に付けるラーメンは鳥出汁の塩味であっさり仕上げてある。普通は醬油味でしょ?
あれだと味がかぶっちゃうじゃない」
「 かぶるって? 」
「 醤油同士だとつまらないし、甘辛の味付け餡掛けだったりすると、なんとなくしつこくなるよね 」
ホントそうだ、と思い頷くと、
「 ご飯ものに付属のスープというよりスープ自身をしっかり味わって欲しいのよ 」
なるほど〜
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