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第212話

閑話 小次郎のアイドルは、ニャンニャン その8 よろしくおねがいします、と頭を下げながら今日感じたことを思う。 中に入ってみるとみんな普通の人と同じ。でも、お客で来ると雰囲気が全く違って見えるのはここがステージだからなんだ。 改めてお店というのは特別な雰囲気を作るステージなんだと再認識。ますますここで働くのが楽しくなってきた。 僕だって方向は違うけどステージ体験者だし頑張ろう!小さくガッツポーズした僕の頭を 「 なんか、楽しそうだね!いいなぁ杏果チャンは 」 と、お父さんはわしゃわしゃと撫で回した。 「 オヤジ、王国に怒られるぞ、勝手に杏果チャンに触ると 」 というお兄さんに、 「 平気平気、王国に見えないところで触るから 」 僕はお父さんに気に入られました。 ラーメン屋さんというのは忙しいんだな、途切れることなくお客さんが入ってくる。 お姉さんが休憩に入ると、レイさんと僕の二人。 もう必死で注文を取って運んで、下げて。 目が回りそう。 そして、何故だか僕のこと名前がもう知れ渡ってる。 店に入った途端、君が杏果ちゃん? と名指して呼ばれるし、写メは撮られるし。 レイさんが後で教えてくれたんだけどね、お父さんがラインで新しいバイトって流してるらしい。 「 お客の入りが普段よりいいね 」 とレイさんとお姉さんが話している。 「 普段ラーメンだけの人が餃子も頼むもんね 」 「 杏果チャン効果だわ 」 「 え?僕の? 」 「 そうラーメンと餃子頼めば杏果チャンが二度と来るじゃない。 さっきの人なんて、杏果チャンのことレンゲもったままボンヤリずーっと見てたわよ 」 と珍しくコロコロ笑うとお姉さん、初めて笑う顔見た。しげしげと眺めていた僕に、 「なに?あたしが笑うのはそんなに珍しい?」 「 はい 」 と正直に漏らした一言に又お客さんたちは笑ってる。 そんな会話してても、目まぐるしく席は回転してる。 と、お父さんが厨房から唐突に、 「 杏果チャンスペシャルランチ、てのはどうだ?杏果チャンが本日食べたいものをランチで提供するのよ 」 と声をかけると、 カウンターのお客さんたちがいっせいに 「 いいねぇ〜 」 と応える。 なんなの?この店は…… そんなこんなで初日の勤務が後1時間となったところで、やっと安藤くんがやってきた。

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