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第213話
9 閑話
小次郎のアイドルは、ニャンニャン
その9
少し荒くついた息を整えながらお店に入ってきた安藤くん。
その後ろからもう1人男の人が入ってきた。
お姉さんとレイさんは器用に安藤くんとお客さんを分けて
おはようと
いらっしゃいませ〜〜
と声をかける。
僕はそんなに器用にできないから
「 あ、あ、あ、
いらっしゃい、ませ 」
とおかしな声かけになった。
微笑んだ安藤くんは僕に近寄って
「 おはよう、杏果!どう? 」
と優しくそっと腕をとってくれる。
僕はもうそれだけで嬉しくてうるうるしていると、
「 こらこらじゃれてんな 」
と一緒に入ってきたお客さんに言われた。
この人?
あ、この間和也さんと来た時、一緒に話した人だ。確か団さんていうフリーのジャーナリスト。
「 こんにちは 」
と僕が挨拶すると、
「 おう、今日からバイトか? 」
と聞かれたので、はいと答える。
団さんは頷きながらカウンターの端に座り早速ビールを注文している。
安藤くんはちょっと団さんの方を見てから、僕の腕を引いてお店の外に誘うと、
え?と思う間に外階段を上がって二階の部屋に入る。
扉を閉めると、
「 杏果…… 」
と言いながら抱きしめられた。
あったかい。
抱きしめられて少し堅かった身体も従順にその腕の中で解けていく。
安藤くんの背中に腕を回して僕も強く抱きしめ返すと、もう一度、
「 杏果……本当に無事で良かった 」
とため息を吐くように囁く安藤くん。
僕の頤に手をかけくいっと持ち上げると、唇に軽くキスをしてくれる。
何回かチュッチュッと繰り返すと、
これ以上は?と見つめあって、お互いに噴き出しちゃった。
階下ではお店で働く人たちとお客さんたちがいるのにね、こんなことしてるのがバレちゃったら恥ずかしい。
僕が赤くなったのを見て、
「 杏果、よく似合ってる、可愛い 」
と又強くハグをしてくれた。
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