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第214話
閑話
小次郎のアイドルは、ニャンニャン
その10
上着を替えた安藤くんと一緒にお店に戻るとお客でほぼ満席。
安藤くんも驚いて
「 今日、すげえなぁ 」
と言いながらカウンターの横の小扉から厨房に入る。
「 杏果チャン効果 」
とお父さんのひとことを聞いて、
「 流しただろう? 」
と返す安藤くん。
「 うん、そりゃそうでしょ!
なんたって背中のニャンコがウッキーですよ。
こんなに可愛い子入ったからには宣伝しなきゃ! 」
お父さんの意味不明なウッキーにカウンターから笑い声が起きると、安藤くんは仕方がないなと言いながらため息をつき、
「 杏果、あんまりニコニコしなくていいぞ 」
と言いながらシンクの前で大量に溜まった洗い物を黙々と片付けていく。その手際の良い逞しくて綺麗な背中に思わず見ほれてしまった。やっぱり安藤くんカッコいい。
杏果チャン とお兄さんが手招きして僕を呼ぶ。
「 なんか王国ともう夫婦みたいだね~
あっと、これ運んで、団さんにね 」
と調理台に上がった出来立ての水餃子をキリッと指さした。
夫婦、夫婦わー!夫婦!
僕はドキドキしてお盆を落としそうになりながらもカウンターに座ってビールを飲んでる団さんに出来上がった水餃子を持っていった。赤くなってるだろう僕をじっと見た団さんから、
「 良かったな、無事で 」
と何か微妙な心配をされ、
え?なんのこと?餃子が無事で?
と思ってる間にお店は夕方の混む時間帯を迎えてひっきりなしに注文が入る。
ラーメン屋さんて面白い。
3人で餃子20人前も頼む人たちがいるかと思えば、中には頼むのはメンマだけ。あとはひたすらビールを飲んでいる人たちとか。
刺激的で忙しかったバイトはあっという間に終わりの時間になった。
空いたテーブルのお皿を下げるのもだいぶ早くなったとお姉さんにも褒められた。
「 杏果、お疲れ、もう上がる時間だ 」
「 こんなに混んでるときに帰っちゃって 」
「 そんなこと言ってたら、店が終わるまで帰れないよ 」
とレイさんにも笑われた。
僕は今日一体何回笑われるんだろう。
お疲れさま、と皆に挨拶をする。
なぜかお店のお客さんにまで
「 ニャンニャン、お疲れ〜 」
とか声をかけられた。
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