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第215話
閑話
小次郎のアイドルは、ニャンニャン
その11
やればできた……働いた!
ちょっとこそばゆい気持ちのまま、
暖簾をくぐって外に出る。
「 おう、上がり? 」
と言う声に振り返ると団さんが立っていた。
「 ちょっと話さないか?
一昨日のことなんだが 」
あ、と思ったけど、
「 王国には断ってある…俺もすこし気になることがあったから、少し時間が取れるようだったら良いか? 」
僕は暫く考えてから頷いた。
僕にも知りたいことがまだあったから。
「 着替えてきます 」
というと、団さんは目の前のカフェを指差した。
「 あそこの二階いるから 」
と告げると信号の変わった道路を渡っていった。
着替えてから、団さんの待っているカフェに行く。
話すのは2度目の人だけどなぜかついていっても大丈夫だと思わせるのは彼の持っている雰囲気なんだろうか。
僕もあの後の泉くんのことは気にしているから何かわかったなら教えてもらいたいと思った。
カフェの一階はそれなり混んでいて、ラテを買って二階に上がる。
壁を背にした奥の4人がけのテーブルに座っている団さんを見つけて、
「 お待たせしました、ここいいですか? 」
と言うと、
「 君は礼儀正しいんだな 」
と微笑んだ。ああ、この笑い方があったかいんだ。
「 どう、初バイトは疲れた? 」
「 はい、でも楽しかったです。
僕は人と喋るのが苦手な方だけど、今日はなんか気持ちが良かった 」
「まぁあの店は大将が独特だから、合えば働いてても気持ちいいだろうな 」
「 団さんはお店に長いんですか? 」
「 長いって?あの店はこの辺に越して来てからだから10年くらいかな 」
「 10年。じゃぁ安藤くんなんか小学生? 」
「 そうだな、京子が中学で、洸紀は高校生だったかな 」
そうなんだと思いながら僕は小学生だった安藤くんを想像した。
「 まぁあの頃洸紀はほとんど家には寄り付かなかったから、後の2人は店で遊んでるのか手伝っているのか、王国なんかほとんど遊んでたけどな 」
思い出しているのか軽く笑った団さんに
「 寄り付かなかった? 」
と聞くと、
「 まぁ、その関係もあるんだけど、今日話したいことってのは……
そう、あれから君の方はどうした?
預かってたものは渡せたのか? 」
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