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第218話

閑話 小次郎のアイドルは、ニャンニャン その14 そこまで言われたら断る事も出来ないので封筒を預かる。また預かり物をしてしまった優柔不断な自分にため息をつくと。 「 ため息つくと幸福が逃げるぞ 」 と団さんに肩を叩かれた。 団さんと渋谷駅で別れた僕はそのまま電車に乗った。つり革にもたれてうとうとしている僕の肩をポンと叩く人がいた。 「 初バイトお疲れ様 」 姉貴がにっこり笑いながら、 「 降りたらコンビニでケーキ買ってあげる 」と微笑んでいた。 コンビニではケーキと乾杯しようとスパークリングワインも1瓶買い込んだ姉貴と一緒に家路を辿る。心地よく疲れた身体に姉貴が一方的に仕事場のことを喋りまくるのが可笑しくて楽しかった。 僕だってバイトで小さな社会デビューしたのだからこれからはバイト先での色々なことを姉貴に話してみようかな。 家に帰るとちょうどお風呂から上がったヒロシさんが居間にいたので、姉貴は早速スパークリングの栓を開け三人でケーキとワインで乾杯をした。 二人ともきっと初バイトの僕のことを一日中気にしてくれていたんだ。家族っていいな、泉君も加太さんとそんな繋がりができればいいな。 お風呂に入った後明日の準備をしているところで安藤くんからラインが入った。 [ 今電話していい? ] [ いい! ] 迷わず返した途端にスマフォが着信した。 今日のバイトの話から、この次どこに遊びに行こうかなとか話は尽きなかったけど明日は一緒に働けるらしいと聞いてワクワクした。早く明日にならないかな。 次の日お昼前に小次郎の暖簾をくぐると店はすでに満席状態。 「 おはよう、杏果ちゃん! 」 お父さんとカウンターのお客さんたちが野太い声で唱和した。 唖然とした僕にレイさんが一言。 「 店を開いた途端、この混みっぷり。給料を倍にしてもらわなきゃ合わないわね 」 アドバイス?をくれた。 とにかく忙しい忙しくて目が回りそう。でもなぜかお客さんたちが僕を手伝ってくれる。 ここ拭いとこうか? お茶持って行くから、 次々と声がかかる。注文も僕の指名が多いので、脚はもう歩きすぎて棒のよう。 やっと食事に入れた僕にお兄さんが同情してくれた。 「 小次郎のアイドルは忙しい、人気者は辛いね 」 僕はいつ小次郎のアイドルになったんだろう?

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