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第219話
閑話
小次郎のアイドルは、ニャンニャン
その15
今日の賄いは、メニューの中で食べたことがないからと選んだパイコー麺。
アバラ骨付き豚肉を油で挙げた物をラーメンに乗せたパイコー麺。
湯気のたった熱々のラーメン丼を僕に差し出しながら洸紀さんは教えてくれる。
「 骨付き豚肉の衣はすこしカレー風味でスパイスをきかせてある。肉はボリュームあるのを揚げてのっけるから麺が見えないでしょ。
それで、アイドルの件は、後で小次郎のお店のラインを見てごらん。恐ろしいことになってるから……」
頷いて、口の中にまずそのパイコーを放り込むと豚肉の旨さが口いっぱいに広がる。鶏ガラの透明なスープにその衣が天かすのようになって、淡白なスープの味が濃く深くなっている。
アイドルの件はあとで見てみることにして、このスタミナ満点のパイコー麺ですっかり僕は元気になった。
ハフハフとパイコー麺を食べていると、安藤くんがお店に出てきた。
「 おはよう!杏果。
お、うまそうなもん食ってるじゃん 」
「 ホント、これ最高に美味しい! 」
「 杏果ちゃんはなんでもうまそうに食べるから、おじさん作り甲斐がありまんがな 」
カウンターの前からお父さんがお皿を持ってやってきた。
「 オヤジじゃないだろ、兄貴が作ったんだろこのパイコー麺は 」
と突っ込む安藤くん。
「 固いこと言わない、スープ作ったのは、お、れ、ですから。
はい!杏果ちゃん、食べてごらん 」
と軽くかわしたお父さんの持っていた
お皿が僕の前にトンと置かれた。
これはなんだろ?
「 オヤジ、これやばいだろ 」
え?なんで?僕は分からずしげしげとお皿の上のものを見る。
爪で尖ったところをツンってしてみると
あれ?
「 これって脚?え? 」
「 そうそう、コラーゲンナンバーワン!お肌がツルツルになる豚足の中華蒸しです 」
「 うちのはチャーシューのタレで絡めて蒸すから濃厚でプルプルした美味い味がしっかりと豚骨についてるんだ。結構人気があるけど、しょっちゅうは作らないからメニューには載ってない 」
珍しくコウさんが説明してくれる。
安藤くんが横で不安そうに、
「 杏果、無理しなくていいからな 」
と言ってくれたけど、最初は豚くんの爪に驚いた僕もその良い香りに包まれて
思わずお箸を持ち直した。
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