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第221話
閑話
小次郎のアイドルは、ニャンニャン
その17
休憩から京子さんとレイさんが出てくると、今度は安藤くんが忙しくなる前に賄いを食べるみたい。
しばらくするとバックヤードから、
「 杏果ちょっとおいで 」
と安藤君が僕を呼ぶ。京子さんに行っておいでと促されて入っていくと、
厨房の奥のテーブルで安藤くんと恍紀さんがなにやら真剣に話している。
酸味がとか辛味がとか、
きっと味の話をしてるんだな、
安藤くんが僕に手招きして、
「 杏果、こっちへおいで 」
とニッコリしながら言うと、
恍紀さんが盛大に吹き出した。
「 なに今の猫なで声、王国らしくない
きもちわるい〜〜 」
「 俺だって杏果にしか出さねえよ 」
「 だってさ、、杏果ちゃんこいつひどいんだよ!
いつもはうまいって食べるのに、杏果ちゃんが辛いもの苦手だから、やれ酸っぱすぎるだの、こんなに辛くちゃ食べられないって 」
「 そんな、僕の舌なんて気にしないでくださいね、辛いものも最近では少しずつ食べれるようになってますから 」
安藤くんがレンゲを口元まで持ってくるからそのまますすれば、口中に濃厚なスープのゴマの風味と仄かな酸味が行き渡る。少し辛いのがかえって食欲を刺激しそう。
安藤くんの目を見つめて、
「 すっごく美味しい、
これが酸辣湯? 」
と聞くと、
「 そう、この玉子が最後に具に絡みついて余計に美味いだろ、ちょっと麺と一緒に食べて 」
と、丼を僕の前に押し出す。
一箸麺をすくってレンゲに乗っけて食べてみる。お腹いっぱいのはずなのに酸味が刺激になってとても美味しい。
「 可愛い顔しちゃって 」
安藤君が僕の頭を撫でると、恍紀さんが呆れたように笑った。
店に出ると京子さんが生ビールのタンクのかえかたを教えてくれる。
だんだん役に立ってきてる?
らっしゃっい!という声に入り口の方を振り向くと、見たことのある顔が並んでた。
「 お、やってるな 」
「 はーい、杏果〜〜」
「 お邪魔しまーす 」
と入ってきたのは、
姉貴と陽子さんと、和也さんだった。
あっ、預かったもの……
和也さんの顔を見て昨晩のことを思い出した僕。
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