229 / 325

第229話

25閑話 小次郎のアイドルは、ニャンニャン その25 和気藹々とおつまみを選びながら二郎さんと絡むのも楽しい。 安藤君は横で微妙な顔しながら、それでも一緒に笑うところは笑ってる。 冷やしトマト、ミニトマトがピクルスみたいに酸っぱいくてほんのり甘くて、 「 これ、すごく美味しい! 」 「 すごく美味しい、何回め?杏果ちゃん 」 「 二郎さん、名前呼び禁止! 」 こんなやりとり本当に幸せ。 ガラリ! 引戸を開ける音がやけに大きく響いた。 お店の人たちが一切に出入り口を見るとそこには、 どピンクのビスチェに黒の超ミニフリルスカート、足元は真っ赤なブーティー、そして頭は青系アッシュのロングウェーブの鬘?を被ったサンドラさんが出現していた。 入るなり派手なウインクを一発かましたサンドラさん。 「 あら〜〜いらっしゃいが聞こえないわよ〜〜 」 「 い、いらっしゃい 」 目の前に視線を戻すと、真っ赤な顔の二郎さんがいた。 「 へーこりゃおもしろい 」 隣でつぶやく安藤君の声がしたので、 「 なにがおもしろいの? 」 と小声で聴くと、 「 杏果にもそのうちわかるよ 」 とウインクしてよこす。そのかっこよさにぼっとしてると、バッコーンとサンドラさんに頭を叩かれたのは安藤君。 「 いってぇー!なにするんだよ 」 「 ニヤニヤしてんじゃないわよ、全く 」 と言いながらさっさと僕の横に陣取った。 サンドラさんをガン見してる目の前の二郎さんの顔色は赤から今や蒼白。 「 あっ、この人、どっかで会ったことある気がする 」 というサンドラさんの言葉に二郎さんは高速で横にかぶりを振りながら、 「 ないです、ない 」 と悲痛な声をあげた。 これはお店のお客さん全員わかる。 二郎さん、絶対にこの人(サンドラさん)知り合いだ。 二郎さんのその答えに、 「 ま、いいけど、そのうち思い出すわよ、あたしはビール生ね 」 「はい、生ビール、カウンター 」 と元気ない声で奥に声をかける二郎さん。 「 ところで、何で連絡してこないのよ〜 江ノ島に来なさいって言ったよね 」 サンドラさんの口がとんがっている。なんだかその顔が可愛くておかしくて笑っていると、僕の長めの髪を耳にかけながら優しく尋ねる。 「 心配してたよ、元気? 」

ともだちにシェアしよう!