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第230話
閑話
小次郎のアイドルは、ニャンニャン
その26
「 ごめんなさい、色々また忙しくて、バイトもしてるし 」
と答えると、
「 あーじゃあまだなんだお尻の本番 」
がちゃんと派手な音がした、二郎さんが鉄のコテを鉄板に落としていた。顔はまたユデダコ。
「 サンドラさん、具体的な名称はやめてください 」
と安藤君が真顔で抗議をするも、
「 ハハハ、ゴメンゴメン 」
と全く悪びれてない。さすがサンドラさん。
「 なに頼んだ?
え?もんじゃ? 」
運ばれてきたもんじゃに嬉しそうな顔をしたサンドラさんは、安藤君の前に置かれたもんじゃの器を強引に取り上げて焼き始めた。
ルンルンと唄を口ずさみながら、手はコテでどんどんドーム型を鉄板の上に作っていく。
「 キャベツを輪っかにして、
溶岩が溢れないように真ん中に入れるのよ〜」
と軽快なリズムで何か面白いものが出来上がってきた。
「 そうそうチーズ、チーズ、ステキな匂い、おおジョゼフィーヌ、今夜は勘弁しておくれ〜」
なに?誰?ジョセフィーヌって?
店中のお客さんがサンドラさんに大注目してる。二郎さんはもうサンドラさんを見ないようにか、鉄板の一点を見つめたままで手だけ必死で丸いかを焼いている。
「 ほらほら土手崩して土手土手 」
と言いながらコテでどんどんリングを崩していく。
安藤君も僕の前のリングの土手を崩しながらはがしを持ったままの僕を促す
「 ほらほら杏果やってみて 」
「 う、うん 」
はがしをどうやって使うかわからない僕は恐る恐るはがしをもんじゃに近づける。
「 どんどん崩して広げるから、
はがしで鉄板に押し付けて、食べてくんだよ、熱いから気をつけて、ほら」
と言いながら安藤君がはがしをそのまま口に入れてくれる。
「 お、い、し、い!
これすごい 」
「 こっちはチーズ入り、杏果食べて
ハイ!あ〜〜ん 」
と今度はサンドラさんがはがしを口に入れてくれる。
安藤君が
「 随分手際が良いですね」
とムスッと言うと、
「 ふふ、私さぁ、サイドビジネスでもんじゃ屋やってるからね〜 」
とこれまた驚く話が披露された。
「 サンドラさんて本業は? 」
と僕が聞くと、
「 あらやだぁ〜本業は杏果ちゃんよくご存知の陰間王子、お尻の躾師じゃないの 」
一瞬お店はシーンとなった。
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