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第247話

お兄さんの秘密 2 テーブルの団さんが座っている反対側に腰を下ろす。 「 よく来てくれたね。ありがとう 」 強面の鋭い眼をした印象の男から 予想していた言葉より遥かにまともな挨拶が出た事に少々びっくりしながら、 「 なにか注文を 」 という言葉にテーブルの上を見ると、そこにはコーヒーらしいカップが置いてあった。 「 俺も同じもので 」 と応えると、奥にコーヒー一つと声をかける。 バックから封筒を取り出した俺に少し眉をあげ、 「 伝言という形を取って申し訳なかった。こんなことをお願いする理由をまずは説明させてください 」 と前置き少々長い説明に入ったのはコーヒーがきてからだった。 「 前は某新聞社にいたが事情があって退職し今は完全なフリーの記者をしてます。ネタを探り記事を書きそれを色々な編集社に持ち込んで売る仕事です 」 「 この週刊誌の内容、俺と関わってる箇所はないでしょ?あなたが俺に聞きたい事はわからないけど、今日来たのは俺の方の疑問を解決するのにこの週刊誌がきっかけになりそうだと思ったから 」 少し黙った団さんに俺は伝える。 「 喋りかた丁寧だと話しにくいから、いつものあなたの話し方にして 」 頷いた団さんはその前の俺の話の穂を引き継ぐように喋りだす。 「 あの週刊誌のネタを手に入れたのはもう10年前だ。あの男の子を買っていた代議士は今は与党の大物になっている。逃げられて追いきれずに俺が社を辞めたきっかけにもなった 」 「 今は私怨?」 「 いいや違う、3年前、また違うルートから証拠になるものを手に入れた。ところが……」 「 ところが?」 「 どうしても協力して欲しい事がある。話を聞いた後協力する気がないら今回の話は忘れてくれ 」 そんな紋切り型の言葉を吐き深々と俺に頭を下げた目の前の男。 潔いのか図々しいのか、兎に角信頼はできそうなので自分が気になっていることを少し話すことにした。 「 俺の過去は人にペラペラと言えたもんじゃない。でもやったことは俺にはもう終わったことだし、なにを言われても昔の話だ、で済ますことだけど、ひとつだけ知りたい確かめたいことがあるんだ 」 ひょいと眉を上げて俺を睨みつけてくる男の目、濁りのない境界のはっきりとしたその瞳にこれは絶対に物事を追う確かな目だなと確信した。

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