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第250話
お兄さんの秘密 5 ( 杏果 )
小次郎の暖簾を潜ると早番で上がったはずの洸紀(こうき)さんが反対側の道を急いで歩いて行った。
どこか出かけるのかな?スマフォで時間を確認するともう10時過ぎ。駅は同じ方向なので僕も洸紀(こうき)さんの背中を追う形で坂を下りていく。すっと黒い車が洸紀(こうき)さんの横に停車すると、窓から人が声をかけてるみたいだ。洸紀(こうき)さんは何度首を横に振るのがすごく気になった僕は止まってる車に近づくと、急に後部座席かのドアが開き腕が出てくると強引に洸紀(こうき)さんを車に引っ張り込んだ。
「 あ!」
と言う悲鳴が上がったのが聞こえたけど、街を歩く人も夜中前の喧騒に誰も見咎めもしない。
車は急発進して遠ざかるけど
僕は駆け寄りながらそれでもナンバーは暗記した。
品川ナンバーの◯◯◯◯
忘れないようにすぐにメモに打ち込むと今出たお店にとって返した。
「 安藤くん!大変だよ」
お客さんが帰った後の清掃も済んだ店内はテーブルにコウさんと安藤くんとお父さんが腰をかけていた。
「 どうしたの?杏果 」
帰ったと思ってた僕がお店に息を切らして戻ってきたのにびっくりした顔の安藤くんが、
「 何かあった?」
と聞く声を遮って
「 洸紀(こうき)さん、洸紀(こうき)さんが車で連れてかれた!」
「 え?!どういうことだ?」
「 僕の前を歩いてた洸紀(こうき)さんが、寄ってきた車に引っ張り込まれたんだ、これがその車のナンバーで 」
お父さんと安藤くん、コウさんが三人で顔を見合わす。
「 それ、どんな車だった?」
「 黒い、黒のセダンでタクシーみたいな 」
何でこんな説明しかできないのか、悲しくなって俯くと、安藤くんがポンポンと頭を叩きながら、
「 黒いハイヤーの大きさの車だった?どんな人間が乗ってた?」
と静かに聞いてくれる。
少し考えてから、
「 多分男の人二人は乗ってた、姿は分かんなかったけど 」
と思いだしながら答える。
お父さんは腕組みをすると、
「 知り合いだってことはないか?
明日帰ってこなかったら連絡してみるかな 」
と呟いた。
「 え?そんなんで大丈夫なんですか?」
冷静ぶりに驚くよ!
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