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第254話
お兄さんの秘密 9
「 兎に角、事件から渋谷で一斉補導がやられてさ、少年少女が1,000人以上補導された。その後、警察が本元だろうと思う会社をガサ入れしたんだけど、なぜか綺麗にあの人の関係のブツだけは出てこなかったんだとさ。クラブが借りていたらしい川崎のアパートから、1,000本以上のビデオテープと2,000人の顧客リストが押収されたっていうのに、殆どが偽名ってそんなの当たり前じゃないか。それを理由にして捜査は打ち切られたってわけだ。これがなんか背後になかったと思うやついるの?
これ書いたやつもそう思ったんだろ」
長い話の後、疲れたと言わんばかりにため息をつきながら川海老を突く嶺さん。
「 それで?なんでそんなことを今気にしてる?」
「 嶺さん俺のDVD見たことあるなら俺の相手の子も覚えてます?」
「 え?和也の相手の子? うーん 」
嶺さんはそのあと黙り込んだ。
「 悪いけど、あんまり覚えてない……でもなんとなく似た子はあの後どこかで見たような気もするけどな 」
「 俺、あの後なんとかあいつらとは縁が切れて嶺さんのお陰だけど、なんとか這い上がった……でも、あいつあだ名はコウって言うんだけど、コウはそのまま会えなくなった。俺は独り身だったから脅す相手もいなかったけど、コウは渋谷で家族が店やってて、それをあいつらには知られてたから脅されてそのままだったのかもしれない 」
「 そりゃぁ気の毒な話だけど、家族がいたならなんとかなってるかもしれないじゃない 」
「 そうだと良かったけど…… 」
嶺さんに団というジャーナリストの話をしようかどうするかと迷っていると、
「 あ、なんだこの団って言うの知ってるよ、この記事書いた男 」
「 知っている?」
「 ああ、真山のインタビューした男だよ。そうそう在京新聞出のジャーナリストらしいって真山が言ってたな 」
「 真山さんはどうしてインタビューを受けたの?」
「 和也は知ってるだろ?真山は女だってことは 」
「 うん知ってる……」
俺の口調もいつの間にか昔嶺さんと暮らしていた頃の口調に戻ってた。昔の話をすると心はすっかり当時のものになる。
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