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第255話

お兄さんの秘密 10 「 真山の性同一障害のことでインタビューを入れてきたんだよ、その団っていう男が 、で、用心深い真山に頼まれて俺がその時の動画を撮っていたってこと 」 そこまで聞いたら話さない理由もない。俺は団さんとのやりとりを嶺さんに伝えた。 「 オヤジさん、そば、ざるで二枚 」 俺の話を聞きながら、間に蕎麦を注文する。 結局注文してから蕎麦を食べ終わるまでの時間、俺の話はかかった。 蕎麦湯を蕎麦猪口に注ぎながら、 「 ここの出汁、美味いだろ! 最近小耳に挟んだけど、なんかもう切られるみたいよ 」 「 切られる?」 「 そう、今なんかの副大臣やってるだろ?若いのに出世頭だったらしいけど、おいたがバレてきたんじゃないの?トカゲの尻尾切りだろうね 。 警察もまた動くんじゃないの?」 俺が身体の関係があった頃はまだ父親の秘書だった筈だけど、 「 今は国会議員?」 と聞くと呆れたように、 「 お前、全然テレビとか見ないの? オヤジさんが倒れてムラ引きついですぐの総選挙で受かったじゃん、結構テレビに出てるぞあの人 」 と嶺さんに言われると、何とはなしに名前は電車の吊り込み広告なんかで見たことあると思い出した。 「 すっかり忘れてた 」 「 和也ってそんな顔して本当にドライなんだな、まぁ俺だって浮気したらあっさり一回で捨てられたし 」 とんでもないことを言う口を皿に残っていた板わさを突っ込んで塞いだ。 「まぁあの押収したデートクラブの名簿はまだ残ってるんだろう。偽名でもさ、大企業の幹部、弁護士、高級官僚、大物政治家その二世三世が並んでたらしいから、その名前の本名知ってたらそりゃ出世も早いけど邪魔なもんは邪魔なもんだよね、何が引っかかってるのかわかんないけど、とにかくコレ」 嶺さんは首からの辺りで手刀を切った。 結局情報通の嶺さんにもデートクラブの摘発後そのクラブの子達がどこにどうしたのかはわからないと言われた。もっと底辺に潜ってしまったのか、足を洗えたのか、色々な立場の子がいたんだろうから当然だけど、やっぱりコウがあの後どうなったのかはわからない。撮影の合間もコウは自分のことはほとんど喋らなかったし、撮影中はとにかく過酷で疲労困憊していたから。やっぱりあの渋谷の店で確かめるしかないのか。

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