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第258話
お兄さんの秘密 13
同じ階に……
「 え?!」
「 それも隣……言われてみるとかなり怪しいよね、あの人たち……隣の部屋は僕の部屋より広いんだけどね 」
耳元のスマフォから和也さんの怒鳴り声がした。
「 コウが、そこに連れ込まれたのか?」
「コウ?コウって 」
「 とにかく俺もそこに行く、どこのビル?」
あまりの剣幕にわけもわからず僕はさっき入れておいたマップをラインで和也さんに送った。
「 コウって洸紀のこと?和也さん知ってるの?兄貴のことを?」
安藤君にそう尋ねられ、僕はおでん屋さんでの和也さんの話を思い出した。
和也さんの探してる人に洸紀さんが似てるのかな?今度は洸紀さんに合わせてくれってさっきも頼まれたし……ぐるぐるいろんなことを考えてると
「 そういやぁ、このビルって建て増ししたのか表の通りに面したファッションビルと一部繋がってるんだよな、それが多分隣の部屋は外廊下のベランダ越しに行けるんじゃなかったかな 」
「 え?ファッションビルって、あのクラブファイブとか入ってるビルですか?」
「 そうそう、あのちょっとやばそうな若い子も出入りする 、何年か前にガサ入れされたよなぁ、あの後確かそんな名前に変えて、店のオーナーが変わったんだろうね。うちのベランダから隣のベランダには渡れそうだけど、様子見てみる?」
恐ろしい提案が照さんからされると安藤君はこともなげに、
「 そっすね、行けるなら 」
なんて言いながら照さんに着いて行く。照さんがリビングのサッシを開けて外に出ると渋谷の街のネオンの瞬きが美しい五階からの眺望が広がっていた。
「 安藤君、ここ5階だから!」
「 俺、高いとこ平気 」
ベランダの塀に伸び上がって隣を覗く安藤君の腰にやめて!と思わず縋り付いた。
「 大丈夫、無理はしないよ、様子を見るだけだから 」
僕の頰をひと撫ですると安藤君は無謀にもベランダに足をかけて樋伝いに隣のベランダに飛び乗った。
「 照さん!本当に大丈夫なんですか?
隣、怖いひとなんですよね 」
「 うーん、この隣の部屋はあんまり明かりもつかないしそんなに使ってないんじゃないか?それに王国ならやばかったら直ぐに帰ってこれるでしよ、身軽そうだし 」
あまりのいい加減な話しに僕は固まった。
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