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逆転アディクション①

  【鮫島さん、ついに死にましたか。なんて、喜ばしいことでしょう!】 「おすわり」 「はあ?俺は犬じゃねぇって、何度言えば分かんだよ?」  という会話をしたのは、何日前のことだろうか。いや、下手すると何週間も前のことかもしれない。何故、そんな会話になったのか、理由を忘れてしまうぐらい前のことだ。ある時を境に鮫島が部屋から出て来なくなったのである。部屋からは出ているのかもしれないが、顔を合わせることがなくなった。ついに、奴は死んだのかもしれない。  というのは、冗談だ。あの人も一応人間だからな、たまに飲んだり食ったりしているところをチラッと目撃したりする。それと、気付いたら、三日に一度くらいは寝ていて、俺の隣に居たりする。ただ、奴は俺の上に乗らなくなったし、接触することも無くなった。隣で静かに眠り、静かに起きて、部屋に戻って行くのだ。一体、何をしているのだろうか。  まさか、筋トレじゃないよな?  仕事か……。  いくら鮫島を嫌いな俺でも、こんなに長く放って置かれると心が落ち着かない。名前を呼び合うことはしないし、別に仲良く笑い合うような会話をしたこともない。いつも、吠えてはからかわれ、というやり取りばかり。ただ、それすら無い今の現状は、ほんの少しだけ、寂しいような……、いや、虚しい。男に喧嘩は付き物だろう?しかし、鮫島の仕事の邪魔はしたくない。こういう時は、彼処に行くのが一番良い。そう、あの場所に……。

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