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先生の過去
歯を食いしばり、袖で涙を拭く俺に青葉先生は優しく頭を撫でてくれた。そして、何かを決心したようにギュッと両手を強く握りしめると真っ直ぐ俺を見つめ重たい口を開く。
「…俺はな、昔、ある先生に救われたんだ。あの時の俺はボロボロで壊れていた。馬鹿やって粋がってとんでもないことをやらかした…。何度も何度も先生を傷つけた。身体にも精神的にも。
それでもそんな俺に何度も手を差し伸べ、すくってくれたんだ。返しても返しきれないほど恩があるんだよ。…あの人と出会えたから今俺はここにいる。だから俺はあの先生みたいになりたくて、教師の仕事に就いたんだ。
俺みたいな生徒を、迷っている生徒を少しでもいいから助けたい。俺は教師という仕事に誇りをもっている。正しく導くために…。だから俺は高橋の気持ちに応えられない。ごめんな」
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