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第3章 王の息子②

   ◆ ◆ ◆  城の南側をくまなく探したが、フィトの姿は見当たらなかった。俺が気に入っている南の塔に行っても答えは同じだ。一体、どこに行ったのか。 「コン……」  コンラッドの姿を見つけて柱の陰から声を掛けようとしたが、王の間には沢山の狼人たちが集まっていて、俺は口を閉ざした。王を前にして、何の話をしているのか。疑問に思ったが、直ぐにそれがフィトの話であることが分かった。  よく見れば、王の前に跪かされている人間が一人居る。あの感じは俺が来た時に似ているな。また追放されたか? 「前王の餓鬼は俺たち人間が預かった。返して欲しければ、王が東の山小屋に一人で来い」  自ら、それを伝えるためだけにこの城に来たのか。 「前王に小さな息子は居ない。そいつの首を落とせ」  覚悟はしていただろうが、伝達役の人間は何を言うでもなく、抵抗することもなく、それが使命だという風にラウルの命によって静かに首を落とされた。  俺は目を逸らしたが、目の前で見ていたコンラッドは、どう思っただろうか。助ける気のないラウルを見て、どう思っただろうか。失望したか、それとも、これが当然だと思ったか。残念ながら、コンラッドは後者だった。 「ラウル様、これは罠です。絶対に行ってはなりません」  そう淡々と言ったのはコンラッドだ。誰だって、そんなことは分かっている。  どんな気持ちで、そんなことを言ってやがるんだ?何があっても王が一番ってか?息子が父親を信じる気持ちは、父親が王を信じる気持ちより優っているだろう?ふざけんじゃねぇ。  今直ぐにでも乱入して、コンラッドを怒鳴りつけたかったが、俺の身体は逆方向、つまり、外に向かっていた。誰かを怒鳴りつけている時間があったら、少しでも早く東の山小屋に向かって、フィトを助けるべきだ。俺は一人でも、フィトを助け出してみせる……。

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