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第5章 魂の願い③

「……痛っ!ぐっ……!」  何が起こったのか、一瞬、頭が真っ白になった。剣はどこかに吹っ飛び、俺は枕にうつ伏せに押し付けられている。いや、上から押さえつけられていると言った方が正しい。 「……んん!んごっ……!  俺は「おい!ラウル!」と叫んだつもりが、全く言葉にならない。恐らく、後ろから俺の身体を押さえつけているのはラウルだ。 「なっ!おい!」  力が緩んだと思えば、ラウルの両腕は俺の身体をグッと自分の方に引き寄せ、仰向けにして服を乱暴に剥ぎ取っていく。 「……お前」  嘘だろ?意識ねぇのか?  俺は奴の顔を見てギョッとした。奴の両目は開いているが、虚ろで反応もない。意識がないまま奴は俺を抱こうとしていた。  俺の匂いがお前を起こしちまったのかと思えば、まだ寝てんのかよ。ひとが大変な時に、このくそお寝坊め。そんな状態のお前に抱かれてやるつもりはねぇ。 「……っ、おい、ふざけんな!起きろ!」  少々乱暴だが、俺はラウルの顔面に横蹴りを食らわせようとした。 「なっ!止めんじゃねぇよ!」  ひとがヒートに堪えながら必死に攻撃を繰り出したというのに、ラウルはいとも簡単に俺の足を掴んで蹴りを阻止した。 「……ぁ」  身体がいつもより敏感になっている所為で、掴まれたところが疼いた。神経を伝って、もどかしい刺激が俺の下半身に集まっていく。 「ラウル……」  もう、本当にどうにかなってしまいそうだ。 「……いくら……痛みが恋しくとも……」 「ラ、ウル?」  ラウルの口がゆっくりと動き、静かに告げる。「蹴りは不要だ。心が痛い」と。 「……ラウル!この……っ」  文句を言ってやろうと思ったが、突然、首筋を舐められ、俺は息を詰めた。それだけで身体が痙攣する。 「レオ、私と結婚して欲しい」  強い意思を持った金色の瞳に真剣に見つめられ、視線が離せなくなった。 「……な、んで、今言うんだよ……?」  初めて名前を呼ばれた。今呼ぶなんざ、今言うなんざ卑怯だ。 「今言わなくて、いつ言うんだ?」 「言わなくとも分かってるって言ってんだよ!言わせんなよ!馬鹿野郎!」  ああ、奴の所為でまた、何も言えなくなっちまった。俺はまだ何も言っていない。 「幸せにしよう。待たせて、すまなかった」  俺がやったんだが、男の象徴をおっ勃てて言うことじゃねぇだろう。情緒?そんなもん知らねぇな。こちとら頭がおかしくなりそうなのをずっと堪えてるんだよ。 「別に待ってね──、ぁ……くっ」  俺が必死に言葉を紡いでいるというのに、ラウルは何の躊躇いもなく俺の中に自身を沈めてきた。 「はっ、あ……っあ────」  ヒートの所為で、俺の身体はラウルを受け入れる準備が出来ていたが、避妊薬の反動というものは恐ろしい。まさか、ラウルの熱い屹立を挿入されるだけで自分が果ててしまうとは……。 「……っ、み、見んな!」  あまりにもみっともなくて、俺は両手でラウルの両目を塞いだ。だが、その手も気付けば、ラウルの片手に拘束され、枕に上から押さえつけられていた。 「……なに、す……」 「私も余裕がない。貴様の匂いが強い。引き摺られる」  俺の耳元で、ただ単語のようなものを並べる様は、王らしくない。だが、確かにラウルも苦しそうに肩を上下させている。 「どれほど貴様に触れたいと望んだか」 「……も、喋るなっ!」  余裕がないと言っておきながら、ラウルは俺の耳に尚も囁き続けた。今の俺にはラウルの低い囁きさえも刺激になる。奴の熱い吐息が俺の吐息に変わる。 「あ……っ、うっ、く……」  強く穿たれ、嬌声が喉をついて出た。 「私はここに居る。そんなに締め付けるな」 「知る、か……っ」  自分からしたら、もう既に中が蕩けてしまったような感覚なのだ。ただ、お前はいつ俺の前から消えるか分からない。もう独りになるのは嫌だ。 「ぅあ……っ、あっ、はっ……!」  身体の深いところを何度も、何度も強く突かれ、尾てい骨の辺りから快感が這い上がって来る。俺の中には快楽しか残っていない。そんな状況だ。  ────熱い……。この熱は一体、どちらのモノなのか。 「う、ぁあ……ッ!」  目の前がチカチカと明滅し、真っ白になる。  俺の身体はおかしい。おかしくて敏感になっているのか、敏感になり過ぎておかしくなっているのか、分からない。もう分からない。  ただ一つ分かることがある。いくら熱を吐き出そうとも、これは終わらない。反動で熱が生まれ続ける。 「……ラウル、……くれ……」  ぼんやりとする頭で、そんなことを言ったような気がする。自分を救える者はラウルしかないと思ったのかもしれない。 「あっ!ぁ……っあ!」 「貴様が愛しくて堪らない」  俺の中を膨れ上がった熱で掻き回しながら、ラウルがそんなことを言った。脳内が沸き立つ、それでもラウルの言葉は聞こえる、理解できる。ほんと神は居ないな。 「あ、ぁ、あ……っ!」 「……ッ……」  俺とラウルが果てたのは、殆ど同時だった。体内に広がる熱に身体が震える。熱が体内をゆっくりと進んでいく感覚に背筋がゾクゾクした。 「駄目だな……、まったく治らない」  ラウルがそう呟いた。熱が生まれ続けるのはラウルも同じ。消えない熱を二人で抱え、俺とラウルは互いの熱を求める様に三日も身体を交え続けた────。

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