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「え、待ってください‼僕は一人で帰れますから。先生は予定を優先してくださいよ」
「だーかーら。お前その体調で無理だろ。それに海はわかってくれたんだからお前が気にする必要ないよ」
そう言って歩き出すと俺の後をまだ納得行かない様子でついてきた。
少し歩いてタクシーに乗り、様子を見てみれば、だるそうにしているものの座席に体を預けようともせずに座っている。
「そういえば、お前の名前って何?」
「えー知らないんですか?担任なのにー笑笑」
おい、さっきまでの申し訳なさそうな態度はどこに行ったよ。つーかだるいなら無理しないで休んでいればいいのに。
「今日知ったのに全員覚えられるか 。で、名前は?」
「斎藤 圭(さいとう けい)です。ちゃんと覚えてくださいねー。あ、運転手さん、あの信号左でお願いします」
圭のマンションには10分程で着いた。
お金を払って降り、帰ろうとすると、
「あ、先生。お金返したいからちょっと待っててください」
と言って圭は俺の返事も聞かずすぐに部屋にいってしまった。
別にお金を返してもらえると思ってなかったし、学生からもらうほど困ってはない。が、待っててと言われたのに帰ってしまうのもなぁ。
仕方なく外で待っていると他の住人らしい人から変質者のような目で見られた。
来るなら早く来いと思いながら待っていると、しばらくして圭が戻ってきて
「ごめんねー先生。はい、これ料金。」
といって渡されたのは一万円札。
元々もらう気など微塵もないので返そうとすると、急に圭が目の前で倒れこんだ。
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