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宣言通り一睡もせずに授業を受けていたら、あっという間に放課後になった。 家に帰ろうと荷物を片付けていたところで携帯が光っているのに気がつく。 見れば未読のメールが一件。 何だろうと思いながら開くとあの人からだった。 開いてすぐに見なければ良かったと後悔する。 “GWは楽しかったよ。また遊ぼうね” 一行のみの簡単なもの。 たったそれだけでも背筋が凍る。 「っっっ!」 ご丁寧に、拘束されバイブを突っ込まれている自分の写真も添付されていた。 嘘だろ。 メールアドレスなんていつ見たんだよ。 最悪だ。 …あぁ、別にいつでもできたか。 あの時は自分のことだけで精一杯だったし。 そもそも目隠しされてたし。 微かに震える指でメールを閉じて、なんでもないと自分に言い聞かせる。 今日は普通の平日。 あの人だって学校があるはずだから家にはこない。 “また”があるのは事実だろうけど、それは今日じゃないはずだ。 大丈夫。 「圭!」 ふいに名前を呼ばれて振り返ると悠が立っていた。 「今日暇?カラオケ行かない?」 「え、あ、いいね。そういえば全然行ってなかった」 「今日急に部活休みになってさー」 「珍しいね。バスケ部ってブラック部活なのに」 「ほんとそれ。早くいこ」 「うん。すぐ行く」 残りの教科書をすべて鞄に突っ込んで、一緒に学校を出る。 「なぁ、なんかあった?」 「え、なんで?」 「いや、さっき深刻そうな顔してたから」 「そんなことないよ。見間違いじゃない? それよりさ、今日の昼女の子から呼び出されたんでしょ?噂になってたよ」 ヘラヘラと笑いながら答えたら、悠が小さくため息をついたのが聞こえた。 あー、今のは少しわざとらしかったかな。 「……もういい」 「え、何が?」 「なんでもない。あと、昼のは断ったから」 「えー。また?悠は彼女とか作らないの?」 「……お前は?」 「え?」 「お前は好きな子とかいないの?」 「うーん。僕はまだいいかなー。こうやって友達と遊んでいる方が楽でいいし」 「……そっか。だよな。俺も別に今はいらない」 まただ。 悠の表情に一瞬影がさす。 理由を聞こうとしたところでカラオケについてしまいタイミングを逃してしまった。 その後悠がそんな顔をすることはなく、お互い歌って歌って、気づけばもう8時近くだった。 「そろそろ帰ろっか」 「うん。はぁー明日からまた部活だよ」 「お疲れ。試合いつだっけ」 「来週末だから、、、12日かな。圭も応援にきてよ」 「あーごめん。その日はちょっと用事あるわ」 「そっか。まぁ俺出ないし。しょうがないね。じゃまた明日」 「バイバーイ」 12日はいろんな部活が大会らしく、他のやつにも見に行こうと誘われたけど全て断っていた。 ……だってその日は、 母さんと父さんの命日だから。

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