2 / 876
第2話
じっとその人を見てると「あ、あのっ」と吃りながらそのプレートを指さした。
「ま、まつまい君で、あってる······!?」
「合ってます。え、他に読み方ある?」
「まつまえ君かもしれないって、思って······。」
どうやらそれを真剣に悩んでいたようだ。面白い人だなぁと思いながら手を差し出す。
「松舞千紘です。よろしく」
「あっ、小鹿 優生 です。1年生······だよね?」
「優生君ね。そう、1年生だよ。優生君も?」
「う、うん!同じだね。よろしくね!」
握手をして、早速1人目の友達ができた!と嬉しく思っていると「優生」と低くて圧のある声が聞こえてきて、優生君は怯えたように声の聞こえた方を振り返った。
「早く部屋を片付けろ。オトモダチと話す暇があるならな。」
「は、はい······。ごめんなさい。」
優生君のお兄さんだろうか。優生君は柔らかくて優しくて可愛らしい顔をしているけど、その人はキリッとした顔をしている。けれど何処と無く2人は顔が似ていた。
「千紘君、ごめんね。またね」
「うん、また。」
優生君はあの人に怯えてた。もしかしてあの人はアルファなのかもしれない。
オメガはアルファには逆らえない。アルファの圧倒的な圧力を前にして、逆らう勇気なんてない。
今日は入学式があってすぐだから、オメガの寮にはオメガの家族が出入りできる。ここにアルファがいたっておかしくはない。
「······明日から頑張ろう。」
今日はもう部屋に籠るとして、明日からは何からも遅れを取らないように頑張らないと。
部屋に入り鏡の前に立って、自分の頬っぺを両手でパシンと強く叩き、挟んだ。
書籍の購入
ともだちにシェアしよう!