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第4話 千紘side
登校初日。クラス分けは昨日発表されていて、優生君とは同じクラスだった。
寮とは違って、学校では性別は関係ない。ここにはベータも、アルファだっている。
「おはよう、優生君。」
「あ、お、おはよう!」
オメガの席は端っこ。アルファとベータの勉強の邪魔をしないようにっていう理由らしい。そんな、邪魔なんてするつもりないけど。
「このクラスでオメガは僕達だけだって。」
「そうなんだ。なんか······ドキドキするね。」
「うん。ちょっとだけ、怖い。」
優生君の手が微かに震えてる。手を取って両手で包むと、優生君は柔らかく微笑む。
「優しいね。」
「優しい?これくらい普通でしょ。怖いのは俺も一緒。」
そうして話をしていると、突然机を蹴られた。ばっと顔を上げると、ベータかアルファかは分からないけど、オメガではないその人が俺達を見てニヤニヤと笑っていた。
「お前らがオメガか。確かに整った顔してるな。番になってやろうか?」
「は?」
「どうせ番がいなくて困ってんだろ?だからこの学校に入って番を探してるんだろ?」
優生君は俯いて、拳を強く握り耐えている。俺はこんな屈辱を受けて耐えられる程、大人じゃない。
「番になってやるってことは、あんたはアルファ?」
「ああ、だからもっと敬えよ。」
「······」
腹が立って立ち上がり、そのアルファを睨みつける。
教室はいつの間にかシンとしていて、視線は俺達を向いていた。
「あんたみたいなアルファが番だなんて絶対無理。番になる為にここに入ったって?そんな安易な考えしか出来ないの?少なくとも俺は1人で生きていけるようにここに入った。」
「あぁ!?」
胸倉を掴まれる。誰かが助けてくれると思ったけど、どうやら全員がこのアルファの味方らしい。
「無理矢理犯されてえか?」
「誰が。下らないこと言ってないで勉学に励みなよアルファさん。」
そう言ってやると、顔を赤くしたそいつは拳を振り上げた。
あ、殴られる。と思って目を閉じると「やめろ」と言う声が聞こえてくる。
「その子から手を離しなさい。」
「っ、東條 ······」
「聞こえなかったか?今すぐ手を離せ。」
胸倉を掴んでいた手が離れる。苦しいのが無くなって、深呼吸した。
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