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第10話 優生side

僕の後ろの席に座る千紘君。 配られたプリントを回す為に後ろを振り返ると、ふんわりと甘い匂いがした。 そういえば、昨日も千紘君は甘い匂いをさせていたなぁ。香水を使っているのかも。 「そのプリントが次の授業までの課題だ。授業開始時に集める。」 今の授業は英語で、千紘君は苦手だって言っていた。課題を見て「げっ······」と小さく聞こえてきた声に思わず笑ってしまう。 「え、何で笑ってるの?」 「ごめん、げって言うから······っ!」 「だってこれ難しいじゃん。英語ってだけで辛いのに。」 話していると「こらそこ、私語をしない。」と注意されてしまった。慌てて口を閉じると、色んなところから「これだからオメガは······」って聞こえてくる。 「はぁ?オメガとか関係ないし。」 「松舞、私語は慎め。」 「すみません。」 千紘君は納得いかないみたいで、いまさっき配られたプリントを早速折り紙にして遊んでいた。 授業が終わり、ムスッと不貞腐れた表情をしている千紘君が、作った紙飛行機を飛ばして遊び出す。 「オメガだから、なんだよな。同じ人間なのに。ああやって自分より下だって勝手に思ってると足元掬われるんだよ。」 「でも、仕方ないよ。確かに今の世界で結果を出しているのはアルファだし、逆にそうでないのはオメガだから。」 「それはオメガに与えられる環境がアルファ程整ってないからかもよ?」 千紘君はそう言ってまた紙飛行機を飛ばす。それが思っていたより良く飛んで、あのアルファ君の頭に当たった。 「あ、ごめん。」 「お前······」 「英語が嫌いでさ、ついつい折っちゃったんだ。怒らないでアルファ君。」 「······赤目(あかめ) (きょう)だ。」 アルファ君の名前は赤目って言うらしい。珍しい名前だなって思いながら、ぼーっと眺める。 アルファなだけあって男らしい顔をしてる。それにガタイも良くて、筋肉も凄そうだ。 「英語が嫌いなのはいいけどな、プリントで遊ぶな。採点してもらえなくなるぞ。」 「え、それは困る。······ていうか昨日と態度違うくない?どうしたの?心境の変化?」 千紘君が馬鹿にしたようにそう聞いた。僕はちょっと怖くて、1歩引いて2人の様子を見ているしかできない。 「別に。確かに昨日は言い過ぎたし、殴ろうとしたのも悪かったなって。」 「······善し悪しがわかる人で良かったよ。」 「お前さっきから俺のこと馬鹿にしすぎだろ。」 千紘君は誰とでも直ぐに仲良くなれるんだなぁ。その性格が少し羨ましい。
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