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第12話
ショックを受けているのか、椅子に座って項垂れる千紘君。
「そんなの聞いてない······。何のためにあの受験戦争を勝ち抜いたと······。はぁ、だから赤目君は昨日俺達を馬鹿にしてたのか。」
「······それは悪いと思ってる······。でもそれが事実だ。けどな、生徒会の元に嫁ぐのは辞めておけ。」
その理由を教えて欲しかったけど、千紘君は今はそれどころじゃないみたいだ。
「優生君も知ってたの?」
「······僕は、元々そのつもりだったよ。お兄ちゃんがアルファだから、どっちにしろ僕は家に居てられないしね。」
「へえ、お前の兄貴アルファなんだ。兄弟でえげつない差だな。」
「あ、あはは······。」
僕もそう思う。せめてベータだったらなぁって。
「ごめん、ショックすぎて体調悪化した。帰る······。」
「はぁ?大丈夫かよ」
「お、送ろうか?」
「ううん、大丈夫。」
千紘君が立ち上がると甘い匂いがした。それを赤目君も感じたみたいで、千紘君の腕を掴む。
「おい、お前の発情周期はどうなってる?」
「はぁ?発情期なんて来たことないよ。」
「······そうか。早く寮に戻って鍵締めて寝ろ。」
「何?優しいんだかそうじゃないんだかわからない。」
そう言ってカバンを手に取り、教室からフラフラと出ていく千紘君。
「おい、あいつ······発情してねえか?」
「そう、なの······?昨日から甘い匂いはしてたから、香水じゃないのかな······?」
「······まあ、どっちにしろ寮に戻るなら問題ねえか。」
発情は珍しいことじゃない。
ちょうどチャイムが鳴って、次の授業が始まった。
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