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第20話 千紘side
高良先輩に甘えて、その腕の中で気の済むまで泣いた。
病院を出る頃にはもう放心状態で、歩くのもフラフラで、一緒にしてくれていた赤目君に背負われていた。
「あれ······でも、何で赤目君がいるの······?」
「はぁ?」
「千紘君が心配で寮に戻ったら姿がなかったから、慌てて赤目君に言ったんだ。そしたら寮で待ってるしかないって。そこで君が高良先輩と来たから······」
ああ、なるほど。俺はどうやらたくさんの人に迷惑を掛けたらしい。
「······ごめんなさい。」
「······何だよ、お前がそんな感じだとこっちが気まずいわ。」
「まだ出会って2日目で何言ってるの」
クスッと笑うとどんよりしてた空気が少しマシになった。
寮に着いて赤目君の背中から降りる。
「ありがとう。」
「いや、ゆっくり休め。」
「千紘ちゃん、何かあったらすぐに言うんだよ。······あっ!連絡先交換して!」
高良先輩と連絡先を交換すると「俺も」「僕も」と赤目君にも優生君にも言われて、結局全員と連絡先を交換した。
「誰にでも連絡して。1人でどうにかしようとしなくていいからね。」
「あ、ありがとうございます······。」
皆が優しくてどうしたらいいのかわからない。戸惑っていると高良先輩に頭を撫でられて、「さあ、もう帰りな。」と俺と優生君は背中を押されて寮に入った。
「迷惑かけてごめんね。」
「そんなの気にしないで!僕も、甘い匂いしてた事に気付いてたのにごめんね。」
「甘い匂いしてたの?気付かなかったな。」
あはは、と笑うとそれが優生君には痛々しく見えたのか、俺の事を抱きしめて「無理しなくていいんだよ」って言ってくれた。
「僕もね、初めて発情期になった時不安で不安で仕方がなかったんだ。それでもその時は家族がいたから大丈夫だった。でもここは寮だから、家族もいないでしょ······?」
「······うん。本当は凄く不安で、できることなら今すぐにでも番を作りたいよ。」
「そうだよね。俺もその方がきっと、他の人に何かされる不安もなくなるから、早く番を見つけたい。」
本音を話すと止まらなくなった。
「運命の番って知ってる?」
「ううん。何それ。」
「あのね、運命で結ばれてる番の事を言うんだよ。出会った時にはわかるらしい。それも稀だから迷信だって言われてるんだけど、それでも僕はそういう人に会いたいんだよね。」
なんだその素敵な話。
俺もそういう人と番になりたい。
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