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第26話 優生side

高良先輩が走って行くのを見てから、泣くのをやめて教室に向かった。 赤目君はもう来ていて、僕の顔を見るやいなや駆け寄ってきて「どうした」と焦ったように聞いてくる。 「んっ、千紘君がね······っ」 「松舞?まさか、また発情しきって薬が効かないのか?」 「うん······。それで、高良先輩に頼んで、あの······精液、貰うって言ってたのに······高良先輩が、さっき学校に居たから、焦っちゃって······」 「高良は?もう松舞の所に行ったのか?」 「うん」 頷くと赤目君は安心したようで、深く息を吐いた。 それと同じタイミングでチャイムが鳴る。けれど赤目君が席に着く様子は見えない。 「昨日の事もあるし、暫くは松舞は1人にしない方がいいだろうな。」 「でも······多分、もう高良先輩が連れて行ってたと、思う······。」 「······ああ、あの部屋か。」 赤目君は暫くこの教室にオメガが俺だけになるから心配してくれてるのかな。 初めの印象は最悪だったけど、今はそばに居てくれて、安心する。 「お前はあんまり俺から離れるなよ。松舞もそうだけど、お前も危なっかしい。」 「······赤目君は、優しくなったね······?」 「はあ?元から優しいだろ。」 「怖かったよ」 「······それは悪かったよ。」 アルファは普通にしていてもオメガの僕からしたら怖い。アルファ特有の威圧感は、完全に恐怖の対象だ。 「赤目君、僕は1人でも慣れてるから、友達の所に行っても大丈夫だよ。それにほら、チャイムも鳴ったし······。」 「あのなぁ、このクラスにアルファは3人いる。お前と松舞を除けば他はベータだ。ベータもアルファと仲良くしようとはするけどな、お前と同じ、怖いって理由でアルファの中でも俺に近づく奴なんてまず居ねえの。」 そうなんだ。僕の知ってるアルファは人気者だから、赤目君もそうなんだと思ってた。

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