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第30話
その日から暫く、殆ど毎日高良先輩の精液をいただいて、何とか初めての発情期が終わった。
体はもうクタクタで、朝起きても体を動かせない。
「千紘ちゃん、今日は寮に戻って、そこで休もうね。」
「······だめ、今動けない······。」
「あー、そりゃあそうか。昨日もヤリっぱなしだったもんね。」
逆に、何で高良先輩がそんなに元気なのかがわからない。
「入学早々1週間も休んだから、勉強にもう追い付けなさそう······。」
「それは大丈夫でしょ。倍率が高いだけで、勉強する内容はそんなに難しくないよ。」
「そうなんですか?偏差値高かったと思うんだけど······」
「そうなの?······まあでも、初めの1週間だし、中学の復習くらいしかしてないんじゃない?むしろ担当の先生の自己紹介で終わってるかも。」
高良先輩のその言葉を信じることにして、先輩に服を着せてもらって体を起こした。
「おぶってあげるから、ここまで頑張って。」
「······先輩、腰が痛い。」
「そりゃああれだけセックスすればね。」
ベッドの縁に座る高良先輩の背中に寄り掛かる。そうすると先輩は立ち上がって、俺のお尻を支えて落ちないようにしてくれる。
「高良先輩」
「んー?」
「噂でね、生徒会の人とは関わらない方がいいって聞いたんです。」
「酷い噂だなぁ。家柄のことに対してならその通りかもね。」
家柄?そう言えば生徒会は金持ちだって赤目君が言っていたっけ。
「先輩は生徒会書記?」
「そうだよ。あれ、言わなかったっけ?」
言われた気もするけど、初めて聞いた気もする。荷物を持って部屋を出た高良先輩は、オメガの寮に向かう。
「じゃあ、先輩もお金持ちだ。」
「んー、まあ、そうかな。」
「お金持ちだから、関わらない方がいいって言われてるんですかね。俺は先輩と関わって、いい人だと思うし、むしろ俺が迷惑かけてるのに。」
そう言うと先輩は小さく笑った。
表情は見えなかったけど、少し寂しそうな笑い方だったと思う。
「高良先輩」
「なあに?」
「俺、高良先輩の優しいところ、皆に知ってもらいたいです。」
「あれー?俺が優しいっていう噂は流れてないの?」
「知らないです。」
寮について、門の前で背中から降ろされる。
荷物を受け取って、先輩に頭を下げた。
「お世話になりました。」
「いいよぉ。これからも何かに困ったら気軽に言ってね。」
「ありがとうございます。」
やっぱり、優しい人だ。
先輩は優しく笑って、俺が寮の中に入るまで見ていてくれた。
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