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第33話 千紘side

久しぶりに学校に行くと優生君と赤目君が駆け寄ってきた。いや、まだホームルーム中なのに。ほら見て、麻倉先生が笑顔で固まってる。 「赤目に小鹿ぁ、お前らいい度胸してるなぁ。」 「ひっ!」 「いいだろ、久しぶりに松舞に会ったんだ。」 「······まあでも確かに、お前らが仲良くなったのは嬉しいな。」 落ち着いて席に着くと、前の席の優生君が振り返って俺を見る。 「先輩は?」 「寮まで送ってくれて、そこで別れたよ。」 ホームルームはすぐに終わって、赤目君がやって来た。 「大丈夫か」 「うん、大丈夫。ありがとう。」 「板書はとってるし、プリントももらっておいた。今は寮に置いてあるから、後で届ける。」 「え、そんなのいいって!俺が取りにいく!本当何もかもありがとうね。······ていうかやっぱり優し過ぎない?キャラが違う······。」 そう言うと赤目君は少し拗ねたような表情になる。 「もう友達だろ」 「······え、待って、今のセリフは赤目君の?」 「本当に心配したんだぞ!優生は泣いてたし!」 「優生!?」 いつの間にか呼び捨てになっている。俺だけ置いていかれたみたいで少し寂しい。 「俺の事も千紘って呼んで!」 「え、あ、ああ。わかった。」 「俺も匡って呼ぶ!」 「わかったわかった。」 匡は笑って俺の頭を撫でた。その手つきが優しくて嬉しい。本当に友達になれたんだ。 「そういえば、俺まだあの英語の課題出来てないんだよね。遅れてでも出せるかなぁ?」 「届けは出してあるんだろ?それなら大丈夫だと思う。」 「······でもね、まだ終わったないんだ。」 「······教えてやるから早く終わらせて提出しろ。」 匡にそう言われて頷いた。実はプリントを持ってきているから、それを出すと解答欄は真っ白で、匡には呆れたように溜息を吐かれ、優生君には苦笑された。 「だって英語嫌いなんだもん!!」 「嫌いなものはしたくないもんね。」 「優生、甘やかすな。ほらさっさとやるぞ。」 さすが、アルファの匡は問題を見るとすぐに俺にわかりやすく教えてくれる。be動詞に動詞、形容詞に前置詞、全部解説してくれたから、この短時間ですごく頭が良くなったみたいに思える。 「だから、ここにはlikeが入る。わかったか?」 「うん!うわぁ、凄い。今まで受けた英語の授業の中で一番わかりやすいよ!」 「そうか、それはよかった。」 匡も怖い顔で笑っている。それが匡にとっての笑顔なんだろうか。面白いから指摘しないでおこう。 「ありがとう」 「勉強ならいつでも教えてやる。わからない所はそのままにしてたらずっとわからないからな。」 「······優生君、匡がまともな事言ってるよ。」 「え?うん、そうだね?」 「おい、俺はいつでもまともだろうが。」 ああ楽しいな。少し不安だった高校生活はこの2人のおかげで、どうやら楽しく過ごせそうだ。

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